第27話振り向いてくれるのを願い(24)

「…奥様、ご気分の方は…」

メイド長がベッドの上で横になるソフィアに声をかけていた。

「…また、迷惑をかけてしまったわね…」

「迷惑とは思っておりません、今は何も考えずにお体を休ませてください…」

「……」

ソフィアは部屋の窓を見て朝になっている事に気がついた。

「…旦那様は…」

「…仕入れ先へお出掛けになりました…一週間後にお帰りだと…」

「…私が倒れた時旦那様は…」

「……」

メイド長は何も言えずにいた…ソフィアはメイド長の顔を見て分かっていた。

「…エミリーも一緒に…?」

「…はい、ですがエミリー様は旦那様とご一緒に行きませんと言われまして、ご実家の方へお帰りになると…」

「……実家には帰っていないわ…」

「え!?」

「あの子は、実家に帰るふりをして何処かで泊まっているわ…」

「そ、それはどういう意味ですか?奥様」

メイド長はソフィアからエミリーは実家に帰っていないと聞き動揺していた。

「…エミリーの事はどうでもいいの…後は旦那様と二人で話せばいいのよ…私には関係ない事だから…」

「奥様…」

「…疲れたわ…休ませて…」

「わ、分かりました…何かありましたらお知らせください…」

「ありがとう…」

メイド長は部屋を出るとソフィアは天井を見て涙を流していた。

「…旦那様は…私が倒れても…心配ではないのね…私は、貴方にとって…都合のいい女だとわかったわ…エミリーが身籠れば…私は貴方の妻では無くなるのね…うう…っ…うう…」

ソフィアは声を殺し泣き続け、涙を流しながらベッドから起き上がると机に向かい両親に手紙を書いた。

『帰ってもいいですか?』短い手紙を書いたソフィアは、もう一通手紙を書き続けた…パルリス家に嫁いでから、もうすぐ一年になろうとしたソフィアは夫のアレックに手紙を書いていた。

話を聞いて貰う事が出来なかったソフィアはアレックに手紙を残す事にした。

「……私がいなくなって、少しでも私の事を想ってくれていたら…この手紙を読んで一緒に年を取る事が出来なかったと後悔してくれたら…私は…」

アレックに書いた手紙を引き出しの中に入れたソフィアは、屋敷を出る覚悟と考えてはならない覚悟を心に決めていた…

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