第25話振り向いてくれるのを願い(22)

バタバタと走り出したメイドはメイド長に知らせていた。

「メイド長、奥様が奥様が…」

メイド長は、ソフィアが倒れた事を聞き医師を呼ぶようにと執事に頼むとメイドを五人連れ、ソフィアの部屋に向かった。

「奥様、奥様!?」

眠ったように目を覚まさないソフィアを見てメイド達に指示を出し、メイド長はアレックの部屋へと向かった。

コンコン!

「メイド長です。おやすみの所申し訳御座いません、旦那様急用で御座います」

アレックに声をかけたが返事がなかった。

「旦那様…奥様がお倒れになったのです」

「はあ?!」

「!…」

アレックの声が聞こえたが、不機嫌な返事を聞いたメイド長はアレックが部屋から出ないと思い部屋を離れた。

カチャ!

「!だ、旦那様」

メイド長はアレックが扉を開けてくれた事に笑顔を見せた。

(旦那様も奥様が……)

扉を開けたアレックの姿を見てメイド長は笑顔が消えた。

目の前のアレックは、顔から流れ落ちる汗と慌てたように着たガウンからは肌が見え、胸元には赤い痕が数ヵ所見えその姿を見たメイド長は茫然としていた。

「…妻がどうした…?」

ハッと我に返ったメイド長はアレックにソフィアを知らせた。

「…奥様がお倒れになったのです。旦那様奥様のお部屋に来てください」

「医師を呼んだのか?」

「はい、もうすぐお着きになると…」

「医師が来るなら大丈夫だろう、俺は明日から仕入れ先に行くんだ後の事は任せる」

「は?!…あ、あの…旦那様…」

「俺は眠いんだ…医師に任せたらいい」

部屋の扉を閉めたアレックにメイド長は震えていた…そして、微かに聞こえる話し声を聞きアレックの部屋から離れて行った。

「……旦那様は…旦那様は…奥様を……」

メイド長はソフィアの部屋には入らず真っ直ぐエミリーの部屋へと向かい、ノックをせずに扉を開けた。

「……」

メイド長が目にしたのは、床には脱ぎ捨てたドレスに靴、ベッドの上には広げた服の数々に何種類物の靴が床に広げ、メイド達が毎日エミリーの部屋の掃除が大変だと話しているのを聞いていた。

エミリーの部屋をメイド長は初めて見て気分が悪くなりそうだった…

「……辞めて行ったメイド達はこんな事で…濡れ衣を……」

エミリーがアレックの部屋に行っている事は知っていたが、アレックを責める事が出来ずにいた…先代からパルリス家にいるメイド長は、アレックが産まれた時から息子の様に支えて来た。

「……エミリー様が、来てから旦那様は変わってしまった…」

メイド長はソフィアの部屋に入りベッドの上に眠るソフィアを見ていた。

「…奥様は…目を覚ましたの?」

「いえ、まだです…メイド長、奥様は大丈夫ですよね

!?」

心配をするメイドを見て笑みを見せていた。

「…大丈夫よ…もうすぐ医師様が来ると思うから準備をお願い」

「分かりました」

部屋の中はメイド長とソフィアだけとなり、メイド長はソフィアの手を取り握りしめた。

「…奥様…申し訳御座いません…奥様…」

涙を流すメイド長はソフィアに謝る事しかできなかった…




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