第23話振り向いてくれるのを願い⑳【披露宴⑤】

「ひど~い、アレック様お姉様は奥さんなのにな~」

「最近、仕事を休んで困っているんだ。今まで彼女が店に行っていたんだが、今は俺が顔を出さないといけなくなったんだ…はぁ…」

「私に会えないから?私も早くお姉様がお仕事をして貰いたいわ。だって、お茶会にお買い物ができないんだもの」

「ふっ…君も、酷いな」

「お互い様でしょう?ドレスを着替えたら部屋に来ても良い?」

「来てもいいが、メイドに見つからないように来てくれ、妻に知れたら大変だからな」

「お姉様はお部屋でおやすみでしょう?」

「念のためだ」

「もう、心配症なんだから、お姉様と離婚したら良いのに…こんなにコソコソと会わなくてもいいのにな~っ」

「それは駄目だ。彼女と離婚する理由がない…それに彼女がいるだけで仕事が早いんだ」

「ふ~ん、お姉様だけ褒めて私は何もないの?」

頬を膨らませたエミリーにアレックはキスをした。

「君は俺の側にいてくれるだけでいいんだ」

「もう、アレック様ったら…でも、嬉しい」

誰もいない廊下でアレックとエミリーは抱き締めキスを交わした。

その様子を部屋から出ていたソフィアが震えながら見ていた。

「…ぁ…ぁぁ…」

「また後で、お部屋に行くわ。アレック様」

「ああ」

二人は離れ自分の部屋に戻り、壁に寄り添い隠れていたソフィアは、笑みを見せて自分の部屋に戻るエミリーを見て腰が抜けたように床に膝を着き涙を流していた。

「うう…っ…私は…どうしたら…」

階段を上がるメイドが、床に座り涙を流しているソフィアを見つけ駆け寄った。

「奥さま!?どうして廊下に…旦那様がお帰りになりましたので知らせに参りましたが…お呼び致しましょうか…」

「待って!旦那様には知らせなくていいの…会いたくないから…」

「奥様?」

ソフィアは両手を握りしめ震える声で話続けた。

「…あの人には妹が…エミリーがいればいいの…私の事なんて何も思っていないのだから…」

「そ…そんな事はありません、旦那様は奥様の事を…」

メイドはその先の言葉がでなかった…

「…いいの無理しなくて…メイドの貴女達も知っているでしょう、旦那様が誰を思い慕っているのかを…」

「…奥様…」

「…旦那様は部屋には来なかったわ…私を少しでも心配していたら部屋に真っ直ぐ来るはずなのに…でも、旦那様は…」

ソフィアは廊下でキスをするアレックとエミリーを思い出し目を閉じていた。

「…奥様、今はお部屋に戻りましょう…」

「……離婚…」

「え!?」

「…あの人の口から言ってくれたら私はこんなに苦しまなくていいのに…」

ソフィアは、いつの日か夫のアレックから離婚の言葉を言われる覚悟を決めていた…




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