第18話振り向いてくれるのを願い⑮
私は食卓にも顔を出さなくなった…
「ん?妻はどうした?」
「…体調がすぐれないと申されまして、暫くはお部屋の方でお食事をなさいますと申されました…」
「この前、医師に見せたのがそんなに具合いが悪いのか?」
「…はい、最近の奥様はお仕事に追われておりましたので無理をされたのだと…」
執事はチラッとアレックの顔の反応を伺っていた。
仕事と聞いたアレックはピクッと食事の手を止めてしまった。
「アレック様が、なんでもお姉様に任せるからよ。可哀想なお姉様!」
「いや、半分はエミリーのせいだと思うが、仕事の途中散歩にお茶会に買い物を付き合わされていたからな」
「ひど~い、私のせいにしてる~っ」
「はははは、悪い、悪い」
「もう、お茶会もお散歩も誘ってあげないんだから」
「俺は別に構わないんだが、エミリーが誘っても行きたいと言っても行かないぞ」
「もう、アレック様の意地悪」
「はははは」
賑わう食卓に執事とメイド達は茫然とした顔で二人を見ていた。
食事が終わったアレックとエミリーは、朝の散歩に出掛けその様子を見ていたメイド達は愚痴を言い始めた。
「な、何よあの二人…旦那様なんて奥様を心配だと思わないの?奥様が体調が悪くても旦那様の代わりに仕事をしているのに…あんまりだわ…」
話し終えたメイドはソフィアが可哀想だと涙を流していた。
「私なんて、仲が良かったラナがメイドを辞めて行ったのよ…私に、『あの人の服は汚していないのに私のせいにしたのよ』と悔しくてエミリー様が屋敷にいるから辞めると私に涙を溜めて話していたのよ…私もラナがいなくなって辞めようとも思ったわ…でも、両親に仕送りしなくてはいけないから…」
メイド達の愚痴や不満が多くなり執事とメイド長は困っていた。
屋敷内は、アレックとエミリーの不満の話があるとは知らないソフィアは部屋の窓から外を眺めていた。
コンコン!
「奥様、お食事はお済みでしょうか?」
一人のメイドが部屋の中に入り、手付かずの料理を見て声をかけた。
「奥様、少しでも食してください」
「…どうして…」
「え?」
「どうして、この窓の景色は庭園に続く道が見えるのかしら…」
「…それは…」
じっと外を眺めるソフィアを見ていたメイドは、隙間から覗いて外を見ると庭園に続く道を一緒に歩くアレックとエミリーの姿を見てしまい、何も言えずソフィアの後ろ姿を見ている事しかできなかった…
「…どうして、旦那様は私を妻にしたのかしら…私でなくても妹のエミリーで良かったのに……」
「お、奥様…」
「…ごめんなさい…私の独り言だから…誰にも言わないで…少しでも食べないと料理を作ってくれた皆に悪いわね」
「奥様……」
メイドは涙目になりながら、ソフィアはそんなメイドに笑みを見せていた。
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