第17話振り向いてくれるのを願い⑭

ソフィアは部屋の窓から外を眺めていた。

コンコン!

「奥様、医師さまがお見えです」

「医師様が!?」

部屋の中へ通された医師は頭を下げ挨拶をした。

「お久しぶりです奥様、お変わりはありませんか?」

三十代の医師はパルリス家の専属医師になり、若いながらその腕を認められた。

「お久しぶりです医師様、今日はどうしたのですか?」

「奥様の体調を見て欲しいと伺いました」

(執事かメイド長が呼んだのね…)

ソフィアはせっかく来てくれたのだからと医師の診察を受けた。

「…お食事は取られていますか?」

「え!?」

「…いえ、以前お会いした時よりお痩せになっていましたので…何かお困りでもありますか?」

「……」

ソフィアは医師に話をしたいと思っていた…夫のアレックが妹のエミリーと浮気をしていると…

「…最近仕事が忙しくて…余り食欲がないんです…」

「お仕事は奥様もご一緒にしているのですか?」

「はい…お店の方にも…」

「そうでしたか、アレック様も奥様の様な方を娶られて幸せな方で、羨ましいです」

医師はアレックは幸せ者だと笑顔を見せソフィアに話していた。

「……そうでしょうか…」

「え?」

「あ、いえ、なんでもありません…今日は有り難う御座いました…医師様とお話ができて良かったです」

「私も、奥様にお会いできて良かったです」

医師はソフィアの部屋を出て元気がない事が気になっていた。

(…以前お会いした時は笑顔を見せていたが…今日の奥様は気が沈んでいるような気がするが…)

医師は屋敷内が変わった事も気になりアレックにも気になっていた。

(奥様が体調不良と話しても顔色も変えず…出掛けるのは…また、様子を見に来た方がいいだろう…)

医師は違和感を持ちながら屋敷を後にした。

数日後、アレックは相変わらずソフィアに仕事を任せエミリーと庭園でお茶を楽しんでいた。

「…奥様、少しおやすみになられては…最近顔色も良くありません…」

「ありがとう…仕事をしていると嫌な事を忘れるから…」

「奥様…」

(皆が私を心配してくれているのは分かっているわ…部屋にいても思い出したくない事までも思い出すから…仕事をしていると何も考えずにできる…)

「奥様…申し上げにくいのですが…エミリー様をご実家に帰らせてはいかがでしょう…」

「え…」

「エミリー様が来られましてから旦那様も変わられてしまいお仕事をしない日が続いています…このままでは、エミリー様の話が親族に知れ渡りこのパルリス家もどうなるのか…」

「……旦那様にもエミリーの事は話したわ…でも、私の話しは聞いてくれなかったわ…ごめんなさい…エミリーを屋敷に招いたばかりに…」

「いえ…奥様が謝ります事は御座いません…旦那様が悪いのです…それから、メイドがまた一人辞める事になりました…」

「え!?先週一人辞めたと旦那様から聞いたわ…今週も…原因は?」

「…それが …」

「…また、エミリーが…!?」

「……エミリー様が旦那様に服をメイドが汚してしまったと言われまして、そのメイドに注意をされたようなのです…長年一緒に働いていましたメイドでしたからわたくし達に『悔しいです』と一言いわれ、辞めて行きました…」

「……」

エミリーの言いなりになっていく旦那様を私は止める事もできない、妻と言う名ばかりなんだと思わずにはいられなかった…






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