第16話振り向いてくれるのを願い⑬【肖像画③】

「…もういいです…歴代の肖像画は旦那様とエミリーお二人の絵をお飾りください…」

「ま…待ってくれ、他の画家を呼んで今度は君と一緒に…」

「アレック様、額は先程で最後になります。ご注文から数ヵ月はかかります…」

「っ…」

「…数日ほど、仕事はおやすみしますので…私は、これで失礼します」

部屋を出たソフィアは、泣きたいのを我慢して自分の部屋に戻り声を殺して泣いていた…

ベッドの上でいつの間にか眠ってしまったソフィアは肖像画の事は気になっていた。

「…どれほど眠っていたのかしら…肖像画はどうなったの?」

ベッドの上から体を起こしたソフィアは、廊下から声が聞こえ扉を少し開けるとアレックとエミリーの声が聞こえた。

「機嫌を直してくれエミリー、さっきは俺も悪かった」

「絵の為に私が怒られるなんて信じらんない」

「君の好きな物を買ってやるから機嫌を直してくれ」

「え、本当!?私この前買い物に行った時に素敵な宝石を見つけたの!!今から買い物に行かない?」

「ああ、行こうか」

「きゃっ、嬉しい~っ、早く行きましょう」

アレックとエミリーが、階段を下りる音を聞きいたソフィアは部屋から出ると階段を一緒に歩いて下りるアレックとエミリーを見ていた。

「……」

(…旦那様は私の事など…)

玄関まで来た二人は扉を開けようとした時、外から扉が開くと医師が屋敷に入って来た。

「アレック様!?」

「なんだ医師か、どうしたんだ?」

「え?どうしたとは…奥様がご気分が悪いと聞きましたので…」

「メイドが呼んだのだな、妻は部屋にいる」

「分かりました…」

医師はアレックの隣にいる女性が気になっていた。

「アレック様、早く行きましょう」

「ああ、そうだな。では医師、私は出掛ける」

「え?!アレック様、奥様には…」

「私は、今から出掛けるんだ。何かあれば執事に話してくれ」

「…あ、はい…」

アレックは医師に話し終えるとエミリーと出掛けて行った。

「はぁ…旦那様にも困ったものです…」

「え?あっ、さっきのアレック様の隣にいました女性は…親戚の方ですか?」

医師は側にいる執事に尋ねエミリーが誰なのか聞いていた。

「親戚…そうですね…エミリー様は奥様の妹様になります」

「あ…奥様の妹さんでしたか…アレック様と腕を組んでいましたからどなたかと…ん?」

医師は自分で声を出して何かがおかしいと首を傾げていた。

「医師様、奥様の部屋へ案内します」

メイドが声をかけ医師をソフィアの部屋に案内した。

「…少し尋ねていいかな…久しぶりに屋敷へ来ましたが…いつから屋敷内の模様替えを…」

医師は今の屋敷内を見て驚きと茫然とした様子だった…幾つもある窓には、ピンク色のカーテンに床の絨毯にもピンク色の絨毯を敷き、花瓶にはピンクの花が生けてあった。

(…いつから、パルリス家はピンク色に…)

「……はぁ…エミリー様のお好きな色だそうです…」

「は?」

「奥様が注意をされましたが、旦那様は奥様を無視してエミリー様がお決めになりました模様替えをしたのです…」

「え、ええっ?」

医師は混乱していたがこれ以上聞く事ができずソフィアの部屋へと通された。

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