第14話振り向いてくれるのを願い⑪【肖像画】

「肖像画!?」

旦那様の残した仕事を終えた私にメイドが呼びに来ていた。

「はい、今画家の方がお見えなんです」

「誰かの肖像画を描くの?」

「奥様と旦那様です」

「え!?私と旦那様?」

ソフィアは驚いて何度もメイドに確認していた。

「…でも、私は…」

「これは、歴代から続いています大事な事ですから旦那様からお呼びがあると思います。それまで、お部屋でお待ちください」

「…分かったわ…」

一時間、二時間…待っても旦那様からの呼び出しがなく、メイドが私を迎えに来て直接肖像画の部屋に行く事になり私とメイドは部屋へと向かった。

「旦那様、奥様をお連れしました」

部屋の中から返事がないため私はメイドに声をかけた。

「返事がないから今日ではないかもしれないわ…」

「そんなはずはありません、他のメイドも画家を見ていますから、旦那様失礼いたします」

扉を開けたメイドと私は、画家が描き終えた絵を見て驚いていた…

「!?な、何故…エミリー様と旦那様が…」

「……っ」

画家が描いた絵は旦那様とエミリーが一緒にいる姿だった。

「あ!お姉様、呼びに行こうと思っていたの今日、画家の人が来ると聞いたからアレック様と一緒に描いて貰ったの素敵でしょう!?」

「……」

頬を染めて笑顔で喜ぶエミリーは自分が何をしたのか気づいていないだろうと…ソフィアは手を握りしめ背伸びをするアレックの側へ歩いた。

「はあ~っ、黙って立つのも案外辛いな~っ」

「…旦那様…」

「ああ、君か…仕事を任せて悪かった」

苦笑いを見せるアレックに(何故私はこの人と結婚したの…)震える手を押さえソフィアは自分を落ち着かせるため息を吐いた。

「…何故、エミリーとご一緒の絵を描かれたのですか?」

「え、何故って…」

「私が、一緒に描いてとアレック様にお願いしたの!お父様とお母様にも見せたいわ~っ、良いでしょう?アレック様」

「いいが…こんな大きな額を持ち出すのは大変なんだが…」

「…この肖像画を父と母に見せるのですか?」

「エミリーがご両親に見せたいと言っているからな…」

クスッとソフィアが笑みを見せる顔をアレックは初めて見た気がして茫然として見ていた時、ソフィアの顔がまるで睨むように見ている気がしたアレックは、いつものように目を逸らしていた。

「父と母に見せますのは良いのですが…旦那様が両親から叱りを受けたいのでしたらお見せください」

「叱り?何故俺が君達の両親から叱りを受けないといけないんだ?」

「はあ…旦那様、この絵は歴代の肖像画として飾るのではありませんか?」

「…歴…あ!…」

アレックはソフィアから言われ茫然と立っていた。



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