第13話振り向いてくれるのを願い⑩

エミリーの我が儘を聞く旦那様は相変わらずで、欲しい物があれば直ぐに買ってあげる旦那様の悪い癖でもあった。

そんな旦那様を見るのが嫌だった…

「お姉様~っ」

「…入るときは、ノックをしてといつも言っているでしょう」

「そんな事を言っている場合じゃないの!」

「何をそんなに興奮しているの?」

「アレック様が、浮気したの!!」

「え…」

エミリーから旦那様が浮気をしたと聞いた時は、そんなに驚く事はなかった…目の前に浮気をしている妹がいるから…

「…それで、相手の方は?」

「カトレア嬢なの」

「カトレア…カトレア伯爵令嬢の事?そのカトレア嬢と旦那様がどうして浮気になっているの?」

「今日、アレック様とお買い物をしていた時、そのカトレア嬢とお店で会ったの、二人とも楽しそうに会話をして私の事なんてほっといて…会話が終わった時、カトレア嬢が体を傾いてアレック様の胸の中に飛び込んだのよ!」

「……」

「お互い見つめ合って、カトレア嬢なんて頬を染めていたのよ」

「…エミリー、貴女その事が旦那様が浮気しているというの?」

「だって~、私の目の前で抱き合っていたのよ」

「……」

『では、貴女がしている事は何?』と、私は喉まで声が出そうになった。

コンコン!

「すまない、エミリーは来ているのか?」

「…はい、いますが…」

「フン!」

エミリーは旦那様の顔を見て頬を膨らませ、それを見ていた旦那様が慌てたようにエミリーの側へ寄っていた。「エミリー!機嫌を良くしてくれないか?カトレア嬢とは何もないんだ…彼女が倒れそうになって受け止めただけなんだ」

「どうかしら、二人とも良い雰囲気だったから私に隠れて会っているんじゃないの?」

「そんなわけないだろう!ほとんどと言っていいほど君と一緒に……ぁ…」

「……」

途中で話をやめたアレックは、側にいたソフィアに気付き気まずい顔をしてエミリーの手を掴んだ。

「エミリー、他で話そう」

「ええっ?なんで?」

「いいから…」

エミリーを連れて部屋を出たアレックを見ていたソフィアは、『もう彼の妻では無くなったのでは…』と思い始めていた。

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