第12話振り向いてくれるのを願い⑨

ソフィアは、空き部屋を仕事部屋として使う事になりエミリーがたまに部屋に来てはアレックとの過ごした日を話し、ソフィアは嫌になる事もあった。

アレックは、仕事部屋にはまだ一度も来た事はなかった…そんな、ある昼の事ソフィアはいつの間にかうたた寝をして夢を見ていた。

コンコン!

『はい』

『俺だが少しいいか?』

『…はい、なんでしょう?』

『今から休憩をしたいんだが、散歩を一緒にと思って誘ったんだがどうかな?』

『え!?散歩ですか?エミリーと一緒ではないのですか?』

『いや…君と二人で行きたいんだ…』

『わかりました…』

仕事部屋をアレックと一緒に出たソフィアは戸惑っていた。

(…今まで私を散歩に誘うなんてなかったのに…)

『アレックお兄様!』

エミリーが廊下を走り笑顔でアレックに抱き付いていた。

(…はぁ、いつもの光景ね…エミリーには注意したのだけど旦那様が『いい』と言われたから、私から注意をしなくなったけれど…散歩の誘いは無くなったわね…)

『アレックお兄様、公園に行きましょう』

アレックの体に抱き付いたまま笑顔を見せるエミリーは、公園に誘っていた。

『妻と一緒なら行ってもいいが』

『え!?』

『え~っ、アレックお兄様と二人で行きたいわ』

『今から、妻と二人で散歩をするんだ。公園はエミリー一人で行くといいだろう』

『!?』

『え…一人で…?』

アレックは、エミリーの腕を離しソフィアはいつもと違うアレックに驚いていた。

『…あの、旦那様?』

『そんな、酷いわ!アレックお兄様…』

涙を溜めるエミリーにソフィアはため息をはいていた…甘え上手なエミリーは、アレックに涙を見せるといつも宥めてくれたのを知っていた。

『はぁ、その癖はやめた方がいい』

『え…』

『行こう!時間の無駄だ』

『あ、あの…旦那様…!?』

手を掴み歩き出したアレックに戸惑いながらも、エミリーではなく自分を選んでくれた夫が嬉しかった…

ソフィアは目に涙を溜めて一緒に歩くアレックの声が聞こえた気がした…

『…すまなかった…もっと早く君に寄り添うべきだった…』

『…旦那様…』

(……)

目を覚ましたソフィアは、涙を流していた顔に気付いた…周りを見渡しソフィアは夢だったのだと…肩を落としていた…

「夢の中の旦那様が私に謝るなんて…夢でなくて本当だったらどんなに嬉しかったかしら…」

ソフィアは、叶うことならまだ一度も一緒に散歩をしていないアレックと一緒に歩く事ができたらと…机の上に置いた手に一雫の涙が溢れ落ちていた…



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