第10話振り向いてくれるのを願い⑦
「最近の旦那様…メイドの私達がいるのにエミリー様と一緒に散歩する姿が多くなったと思わない?」
「奥様がいるのに旦那様は何を考えているの?」
掃除をしているメイド達の話は旦那様とエミリーの話をする事が多くなった……
「出張ですか?」
「ああ、明日から二日ほど屋敷を空ける…俺がいない間屋敷内は君に任せる」
「…行き先を聞いてもいいですか?」
「行き先?」
「…旦那様が何処へ行かれたのか聞かれましたらお応えできませんので…」
「…はぁ、隣の国エタナニアに商品の仕入れに行く、それだけだ」
「…分かりました…有り難う御座います…」
ソフィアは夫のアレックと妹のエミリーの二人の関係を知ってから、仕事を一緒にする日が少なくなりアレックには体調が良い日にだけ仕事をする話をしていた。
「ああ…それから、出張にはエミリーを連れて行く」
「え!?何故、出張にエミリーを連れて行くのですか?」
「君の代わりだ」
「私の代わり?」
「最近体調が悪いと聞いた。本来なら妻である君を連れて行くべきだが、無理な願いは出来ないと思い代わりにエミリーが行く事になった」
「……」
(何故、出張のためにエミリーを…私が体調が悪いと聞いて…行く前から二人で決めていたんだわ…夫婦なら妻が体調不良の時は日を改めるのに…この人は私の事など…)
ソフィアは手を握りしめアレックに何も言えなかった
「アレック様!」
ノックもなしでいきなりエミリーが部屋に入って来た。
(…いつの間にか、お兄様と呼ばなくなった…)
「お姉様!?脅かさないでよ、アレック様の部屋にいるんだもの」
「……」
ソフィアはエミリーとの会話も減っていた。
「どうした?エミリー」
「あのね、お願いがあるの」
「お願い?」
「明日、着ていくお洋服がないから今から一緒にお買い物に行きたいと思ったけど、忙しい?」
エミリーは両手を合わせてアレックに買い物を誘っていた。
「ふう、仕方がない買い物に行こう」
「本当!?ありがとう」
「エミリー…貴女…」
(最近服を買って貰ったばかりなのに…)
「夕食には帰る、それまで後の書類はできる範囲で頼む」
「…分かりました…」
「アレック様、早く~っ!」
「ああ」
アレックの腕に手を組むエミリーの姿を見たあと、二人は買い物へ出掛けて行った。
「…ふ…う…ううっ…」
一人部屋に残されたソフィアは書類の紙を握りしめ声を殺して泣いていた…離婚も考えたが両親に迷惑をかけては駄目だと自分の胸に仕舞い込んでいた…
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