第9話振り向いてくれるのを願い⑥
朝の食卓が最近一人になる日が多くなった…
「旦那様は?」
「まだ、就寝のようですので奥様先にお食事をお取りください」
「分かったわ…そういえば、エミリーも食卓で姿を見ないけれど…まだ、寝ているの?」
「はい、メイドが起こしに行きましたが月のモノが始まりましたご様子でした…」
「そう、始まった頃はエミリーは朝が中々起きて来なかったわ…」
メイド長がエミリーの体調不良を聞いて数時間後に旦那様が遅い食事を終え、仕事をしていた時ノックもしないで部屋に入るエミリーに旦那様が声をかけていた。
「体の方は大丈夫なのか?」
「う~ん、お腹が痛くて~…アレックお兄様に変わって貰いたいわ~」
「はははは、それは無理なお願いだな」
私は二人の会話を聞いて驚いてしまった…
「……旦那様…」
「ん?」
「何故、エミリーの体調をご存じですか?」
「!」
旦那様の驚いた顔と私に目を逸らすのを見て一瞬二人の仲を疑った。
「…そ、それは……」
「……」
「お姉様、私がアレックお兄様にお話をしたの」
「え!?」
「そ、そうなんだ…エミリーから聞いてそれで声をかけたんだ…休憩をしょう…エミリー散歩に行かないか?」
「は~い」
「君も、休憩するように」
「……」
旦那様とエミリーは散歩に誘い部屋を出る時に二人の会話が聞こえた…
「助かったよ…」
「エミリーに感謝してね」
部屋を出た二人に私は胸のざわつきが嫌な予感へと変わった。
それは、直ぐに分かった…私は、心の中で『大丈夫、大丈夫』と何度も言い階段を上がり、旦那様の部屋の前でメイド長とメイド二人が、困った顔で何かを話す声が聞こえた。
「…どうしましょうメイド長…」
「…もしかしたら、旦那様がお怪我を…」
「どうしたの?旦那様が怪我でも…!?」
!!
「お、奥様!!」
メイド長とメイド達が驚いて私の方を見ていた…
「旦那様の部屋の前でどうしたの?」
「…奥様…それが…」
「…そのシーツはどうしたの?」
メイドの持つシーツを見て赤く染みになっているのに気がついた。
「…それは…」
「…旦那様のベッドのシーツで御座います…」
「え!」
私は『まさか!?』と旦那様とエミリーの姿が目に浮かんだ…ヨロッと体が傾く私に「奥様!?」と三人の支えを受け、私の顔は真っ青になるほど血の気が引くのを感じた。
メイド長が私を見て何かを感じた様子だった。
「…も、もしかしましたら、旦那様がお怪我をしているかもしれません…お気を確かに奥様…」
「……旦那様は、エミリーの月のモノを知っていたわ…」
「「「!」」」
「…私がこの目で二人を確かめるわ…」
「奥様…」
私はメイド長に一週間私の部屋で寝泊まりをして欲しいとお願いをした。
私一人では支えきれないと思ったから…
「…奥様、少しお休みください…もしかしましたら、わたくし達の思い違いかもしれません、旦那様は真面目な方です。奥様を裏切るような事はありません…」
「……そうだといいのだけど…あなた達も知っていると思うわ…妹が来てから旦那様の生活が妹を中心にしている事を…」
「奥様…」
静かな夜に部屋の扉が開き閉まる音が聞こえ、廊下を歩く足音はいつも私が知っている足音だった…
「…ま、まさか…」
「…部屋を出ましょう…」
「奥様!」
私は部屋の扉を開きランプの灯りで見える後ろ姿に妹のエミリーが廊下を歩いていた。
「エ、エミリー様!?」
「……」
エミリーは廊下を歩き一つの部屋の前に立ち止まった
「ま!?」
メイド長が驚いてその扉が誰なのか私はじっと見ていた。
カチャと扉が開き中から出てきた人は私の旦那様だった…
お互い笑顔を見せると旦那様はエミリーを部屋に招き入れた。
その様子を私とメイド長は見て、特にメイド長は体が震え真っ青な顔をして立っていた。
私はエミリーが屋敷へ来てから旦那様がエミリーに向ける視線を知っていた…私とは違う視線をあの子に向けていた…
「お、奥様、こんなことはあってはなりません、今すぐ旦那様の元へ…」
「…もう遅いわ…エミリーは旦那様との関係を持ってしまったわ…」
「!」
「旦那様も…私がいても妹を取ったの…私は旦那様にとつて妻だとは思っていないのだから…」
私は旦那様の部屋を見て涙を流し続け…いつかはこの屋敷を出る覚悟を考えずにはいられなかった…
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