第8話振り向いてくれるのを願い⑤
旦那様の代わりに仕事を終えた私は、部屋に戻る為廊下を歩いていた。
「旦那様にも困ったものだわ…」
廊下でメイド長と執事が話をしている姿を見て私は、またエミリーが関わっているのだと思った。
メイド長と執事が困る話しはいつもエミリーが関係していた。
「…どうしたの?珍しく二人で話しているから…」
「あ!奥様…」
「…奥様、また旦那様が奥様にお仕事を…」
「…気にしないで、いつもの事だから…」
屋敷にいる皆は、旦那様とエミリーの仲を知っている…仕事を途中で終わらせ、その後を私に旦那様は任せエミリーと一緒にいる日が多くなった…
皆私の事を心配して「屋敷を出ていくとは言わないでください」と言ったメイドもいたから、だから屋敷を出ていく事ができなかった…
「旦那様が困ったと話をしていたけれど…何かあったの?」
「…それが…庭園にエミリー様の温室をお造りになる話をしていましたので…」
「エミリーの温室?」
「はい、それで温室を造るために周りに植えています庭園の花を無くされると言われまして…庭園の花のほとんどは、お亡くなりになりました旦那様のお母様が大事に育てました花があるのです…その花を処分するようにと…以前は枯れては駄目だと大事になさっていました庭園の花をまさか処分すると申されるとは…」
「……」
私は、パルリス家に嫁いでから庭園には決まられた範囲があった…奥の庭園には、亡きお義母様が大事にしている花があるからと私に見せる事はなかった…
私は旦那様とエミリーが一緒に歩く姿を見て声をかけた。
「…旦那様、エミリーとご一緒でしたの?」
「あ、よ、用があって…仕事を君に任せてすまなかった」
「……」
エミリーと一緒にいるのを私が聞くといつも目を逸らす旦那様を知っている…
「お姉様聞いて、近い内に私の温室が出来るの!アレックお兄様が、私が自分用の花が欲しいと話をしたら温室を造ってくれるって言ってくれたの、もう、待ち遠しくて…温室が出来たらお姉様を招待してあげる!」
「……」
満面の笑顔を見せるエミリーを見て、旦那様はエミリーにどれほどのお金をかけているのか…
「お、おい、エミリー…まだ決まったわけではないんだ…それを妻に話しては…」
「…私が知りましたら都合が悪いのですか?」
「そ、そういうわけでは……」
「旦那様がお決めになった事を私が口出しする事はできませんので…」
「き、君がそう言うなら…」
「ただ、今あります庭園は、旦那様のお母様が大事に育てた花があると聞きましたが…」
「!」
「私は、まだ一度もお義母様の庭園は見たこともありません…エミリーの為に温室をお造りになるのでしたら、私は口出しする権利はありませんから、旦那様のお好きなようにしてください」
「……っ」
私は、悩む旦那様を見たあと側を離れエミリーと口論する話し声が聞こえたのを覚えている…
泣きながらエミリーが温室の話が駄目になったと泣いて話していた。
「奥様、有り難う御座います…大奥様の庭園を残す事ができました…これも奥様が旦那様にお話をしましたおかげです」
メイド長と執事からお礼を言われた私は、初めて旦那様が私の言い分を聞いてくれたのが嬉しかった。
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