第7話振り向いてくれるのを願い④

「奥様、服の袖が解れています」

「え!?あ…本当だわ」

旦那様の所へ嫁いでから外出と言えば、街の中にあるパルリス家が経営している店に、旦那様の代わりに行く事が多く買い物をする余裕はなかった。

「買い物に行きたい?」

「はい、旦那様の屋敷に来てから出掛けた事がないので、明日にでも時間を頂きでかける事が出来たらと思って…」

「…ここへ来て、でかけた事がなかったのか?」

「はい、ありませんが…以前旦那様が買い物にと言われましたがお誘いがなかったので私の方から言いませんでした…」

「…わ、悪かった…いつか一緒に買い物に行こう」

「……」

(旦那様のいつかは期待していないわ…いつもそうだったから…)

「…しかし、困った…君がいないと…」

「何かお困りでも?明日でなくてもいいのですが…」

「…実は、数週間屋敷を留守にする事になった…取引先へ行かなくてはならないんだ…俺の留守の間屋敷内と店を君に任せようと思ってお願いするところだった…」

旦那様は、困った顔で机の上に両手を重ねて私を見ていた。

「…そうですか、お仕事でしたら私の事は気にしないでください、いつでも行けますのでお気をつけて行ってください…」

「はぁ、ありがとう…そう言ってくれると助かる、明日の朝出掛けたいと思う」

「分かりました」

私は旦那様から助かると笑顔を見て本当に嬉しかった

「三週間の予定だが、何か分からない事は執事かメイド長に聞いてくれ」

「はい」

ドサ、ドサッと馬車の荷台に乗せる大荷物のように乗せていた。

(旦那様一人で行くのに、こんなにいるのかしら…)

パタパタと階段を下りてくるエミリーの姿を見てソフィアは驚いていた。

「ごめんなさい、仕度で時間かかってしまったの」

「いや、大丈夫だ」

二人の会話を聞いてソフィアはまさかと思った。

「あ、あの…旦那様、お一人では…」

「ああ…昨日言いそびれてしまった…エミリーが一緒に行きたいと言って…長旅だからと言ったんだが…」

「だって、アレックお兄様だけ旅行なんて狡いわ」

「いや、仕事だが…エミリーの心配はいらない俺が責任持つ…」

「だ…」

「すまない、後は頼む」

「お姉様、お土産を買って来るわ」

私は、二人が乗った馬車を見ているだけだった…

「…奥様…」

側にいた執事にメイド長にメイド達は、私の心配をして一緒に側にいてくれた…服の買い物はメイド達と行き、私は夫のいない屋敷であの初夜で一人で過ごしていた事を思い出し結婚をして一緒に夜を過ごす事もなく、毎晩のように泣いていた……

旦那様とエミリーが帰って来た時、一言「留守にしてすまなかった」と、旦那様から言われただけだった…

自分の部屋に久しぶりに帰ったアレックは、机の上に置かれた書類に驚いた。

「な…なんだこの書類の山は…」

「旦那様のお仕事です」

「な!…俺は君に仕事を任せると言ったはずだ!」

「はい、ですから私は自分の仕事をしました。お店の管理等でも忙しく旦那様の仕事までは手がまわらなかったのです」

「…っ」

「私は、体調がすぐれませんのでしばらくお仕事はお休みいたしますので、旦那様もそのつもりで…」

「!!」

私は旦那様の部屋を出て自分の部屋に戻った。

「部屋には誰も入れないで、エミリーも…」

メイドに話をしてから数十分後に廊下で旦那様とエミリーの言い争う声が聞こえた。

「…今の旦那様は忙しいからエミリーの相手をしてあげる事ができないんだわ…」

その日のソフィアは気分が良かった。



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