第3話パルリス侯爵の夫人として

結婚をして、初めての夜にソフィアは落ち着きがなく少しでも物音がすれば驚く事が多かった。

コンコン!

「は、はい!」

ソフィアは、夫のアレックと思い扉を開けるとメイドが一人立っていた。

「申し訳御座いません奥様、旦那様はお仕事の為お部屋に伺う事ができないそうです。先にお休みくださいと申されていました」

「…そう、ありがとう…」

ソフィアはアレックが部屋に来る事ができないと聞き、仕事なら仕方がないと初夜の日は一人で過ごす事になった。

結婚式から数日間会うことがなかったソフィアは、今日も仕事で帰らないと思っていた。

「奥様、旦那様がお帰りになりました」

「本当!?」

急いで階段を下りるソフィアは、玄関の前でコートを脱ぐアレックの姿を見つけた。

結婚してから五日ぶりに会う夫のアレックにソフィアは側に寄り声をかけた。

「…お、お帰りなさい…旦那様……」

「……ああ…」

アレックはソフィアに一言声をかけると廊下を歩き出し、ソフィアは声をかけた。

「あ…あの、旦那様…今夜は…」

「…仕事で疲れているんだ…」

「…あ…す、すみません…」

アレックは振り向きもせず、妻のソフィアに話し終えると廊下を歩きはじめ食事の部屋へと入った。

夫のアレックとのすれ違いの生活が続いたが、仕事を任せるという頼る姿を見ることもあってソフィアは、アレックと仕事を手伝う喜びを感じていた。

「この書類のサインを頼む」

「分かりました。旦那様…」

「……」

名前をまだ一度も言ってくれない夫のアレックに暫く離れていたから名前を言えない…と思い、いつか自分の名前を呼んでくれる日が来るのを信じ、今は一緒に仕事をする喜びを感じていた。

結婚してから三ヶ月が過ぎ、まだ一度も夫のアレックは妻のソフィアと夜を過ごす事はなかった。

ソフィアも仕事で疲れている夫に無理なお願いが出来ないと思い、夜を過ごす話しはしなくなった。

(…旦那様を待ちましょう…)

そんなある日、妹のエミリーが三ヶ月ぶりに姉のソフィアに会いに来た。

「ソフィアお姉様!」

「エミリー!」

姉妹は抱き締め再会を喜んだ。

「誰か来たのか?」

久しぶりの休みを取った夫のアレックは、結婚以来に会うエミリーと再会した。

「あ…旦那様…妹の…」

「お久しぶりです。アレックお兄様、エミリーです。覚えていますか?」

笑顔を見せて挨拶をするエミリーに夫のアレックは少し驚いた顔をしてエミリーに挨拶をした。

「…ああ、結婚式の日に俺に話しかけて騒ぎ、披露宴ではダンスの時俺の足を踏んだ妹だったな…」

「ええ~っ!?ダンスの時はバランスを崩してしまって、アレックお兄様の足を踏んでしまったけど…まだ、覚えていたのですか~?」

「足の指が折れるところだったが」

「わ、私、そんなに体重をかけていませんけど」

「ははは、そうだったな」

妹のエミリーと一緒に会話をする夫のアレックの笑顔をソフィアは初めて見た。

「疲れただろう?屋敷を案内しょう」

「は~い!」

「……」

(…妹を気遣う旦那様は初めて見たわ…私には一度もないのに…)

ソフィアの前を歩く夫のアレックと妹のエミリーを後ろから見ていたソフィアは、胸に刺さる痛みを感じ二人の姿を見ていた…







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