episode: 007『02 帚木アンダーナイト ~平安京で繰り広げられる恋のかけひき~』

 第7話 「貴族男子の本音トーク! 〜完璧な嫁探しの落とし穴〜」


 左馬頭さまのかみ:「いくら出世しても、元の家柄が元の家柄だからさ、世間の目は変わらないんだよね。

 逆に、元はすごくいい家でも落ちぶれちゃったら、昔の面影なんてなくなっちゃうわけ。

 そうなると、貴族っぽい振る舞いなんてできないし、周りから見たら『うわ、痛い...』って感じになるよね。

 だからどっちも『中流』ってことになるんじゃない?


 地方のお偉いさんたちの中にも、いろんなランクがあるんだ。『中流』って言っても恥ずかしくないレベルの人たちもいるよ。


 それに、やっと高級官僚になれた家よりも、ちょっと下の役人だけど、みんなから認められてて、元々の家柄もよくて、お金持ちでのんびり暮らせてる家のほうが、雰囲気いいんだよね。


 お金に困らないから、ケチケチしなくていいし、そういう家で育った子には、『なんか、いいな』って思うところがたくさんあるんじゃない?

 宮仕えして、思わぬラッキーを引き当てちゃう子も多いんだよ」


 左馬くんがこう言うと、光くんは「つまり、結局はお金持ちじゃないとダメってこと?」って笑っちゃった。


 とうくん:「光くん、そんなこと言うなんてらしくないよ」って、ちょっと叱るみたいに言った。


 左馬くんは、まだまだ話し続けた:

「すごくいい家柄で、今も超お金持ちの家のお嬢様が、『え、こんなに普通なの?』って感じだったら、『なんでこんな子ができちゃったの?』ってがっかりするよね。

 逆に、そういう家のお嬢様が『さすが!』って感じだったら、別に驚かないよ。当たり前じゃん、って。


 俺たちにはよくわからない世界だから、超お金持ちの家のことは置いといて...。

 こんなこともあるんだ。誰も気にしてないような、ちょっと寂しい家に、『え? こんな子がいたの!?』って感じの子がいたら、それを見つけた人はすっごくラッキーだと思うよ。

『意外!』っていうのは、男の子の心をグッとつかむんだよね。


 例えば、お父さんがもうおじいちゃんで、太ってて、お兄ちゃんもイケてない感じ。そんな家を見て、『あ、この家の娘もたいしたことないだろうな』って思ってたら、実は超プライド高くて、和歌も上手な娘がいたりしたら...。

 完璧な子! ってわけじゃないけど、すごく興味わくよね。

『理想の女の子』リストには入らないかもしれないけど」


 左馬頭がこう言いながら、「そうだよね?」って感じで式部丞しきぶのじょうを見たんだけど、

 しきくんは「あれ? もしかして俺の妹たちのこと言ってる?」って思って、黙っちゃったの。

 だって、式部丞の妹たちって、若い男の子たちの間で話題になってたんだ。


 光くんは「そんなに男の子の心をグッとつかむ子って、本当にいるのかな? 上流の子たちの中でも、そんな子ってめったにいないよね」って思ってたみたい。


 光くんは、ふわふわの白い着物を何枚も重ねて着て、袴は着けずに直衣のうしだけをゆるく羽織って横になってた。

 いつもよりもさらに美しくて、「もし女の子だったら、どんなに綺麗なんだろう...」って思わせるくらいだった。

 みんな「光くんの彼女なら、超お金持ちの家から選んでも、まだ足りないんじゃない?」って感じで見てた。


 左馬くんは、ため息をつきながら続けた。

「世間的に『まぁ、いいんじゃない?』って感じの子でも、いざ自分の奥さんにしようと思うと、『合格点』に達する子ってほとんどいないんだよね。

 男だって、役人になって役所に勤めるところまではみんなできるけど、本当に適材適所ってのは難しいじゃん?


 でもさ、どんなに頭いい人でも、一人や二人じゃ政治なんてできないでしょ? 上の人は部下に助けてもらって、下の人は上の指示に従って、みんなで力を合わせて役所の仕事はなんとかなるわけ。

 でも、『家庭』っていう小さな国の『大臣』...つまり奥さんを選ぶときは、絶対に必要な『スキル』がいくつもあるんだよね。


 これはいいけど、あれはダメ...ちょっと妥協しても、まだまだ理想の人なんて見つからないんだよね。

 世の中の男たちだって、別に『女遊び』が趣味じゃなくても、『一生の伴侶』を探すときは、『できれば自分で一から教育し直す必要のない子』を探してるんじゃないかな。」


 左馬くんは、まるで恋愛マスターになったかのように熱く語り始めた。光くんと頭くんは、「おいおい、こいつそんなに詳しかったっけ?」って顔で聞いていた。


「まぁ、別に100点満点の子じゃなくても、『縁』ってやつで結ばれて、一生を共にするってのもアリだよね。そういう男は『まじめ』に見えるし、『捨てられない女』も世間的にはイイ感じに見えるわけ。

 でも、現実を見てみると、そんな都合よくいかないんだよね。」


 左馬くんは、光くんと頭くんを見て、ちょっと皮肉っぽく言った。

「お前ら二人みたいな『イケメン貴族』には、もっと選択肢があるんだろうけどさ。

 俺みたいな『平凡な貴族』の中でも、『これだ!』って思える子なんていないんだから。」


 左馬くんは、まるで恋愛ゲームの攻略本を読み上げるかのように続けた。


「まあ、見た目もそこそこで、ちゃんと自分をコントロールできる子。手紙を書くときは、サラッと簡単な文章を上手に書いて、薄墨で書いた文字で男の心をグッと掴む。そして『もっと深い内容の手紙を書かせたい』って男をらせるわけ。

 で、実際に会って話すときは、ほんの少しだけ近づいて、声が聞こえるくらいの距離で、息よりも小さな声でちょっとしか喋らない...。

 こういう子に、男はホントついつい騙されちゃうんだよね。


『優しくてしなやかな子だな~』って思ったら、今度は『柔順すぎて、ちょっと物足りないかも...』って思っちゃう。

 かと思えば、才気を見せると『もしかして浮気性?』なんて不安になっちゃったり。

 こういうのが、『理想の奥さん選び』の最初の難関なんだよね。


 奥さんに必要なのは『家庭を守る』ことだから、別に文学とか面白い才能がなくてもいいはずなんだけどさ。

 でも、真面目一辺倒で、見た目も気にしないで、前髪がジャマだからって耳にはさんでばっかりで、ただ家事だけを黙々とこなす...。そんな子じゃ、ちょっとね...。


 仕事に行けば行ったで、帰ってくれば帰ってきたで、役所のこととか、友達や先輩のこととか、『誰かに話したい!』ってことがいっぱいあるわけよ。

 でも、それって他人には言えないじゃん? だから、『分かってくれる奥さん』に話さないと、ストレス溜まっちゃうんだよね。」


 左馬くんの熱弁は続く。光くんと頭くんは、まるでラブコメアニメを見ているかのように、興味深そうに聞き入っていた。


「『この話、早く奥さんに聞かせたいな』『奥さんの意見も聞いてみたいな』って思うと、つい外でもニヤニヤしちゃったり、一人で泣きそうになったりするんだよね。

 あと、自分のことじゃないのに『それっておかしくない?』って怒りが込み上げてきて、誰かに言いたくてたまらなくなる時とかさ。

 でも、『うちの奥さんには、こんなこと分かんないだろうな...』って思うと、ため息つきながら一人で苦笑いしたり、『かわいそうに...』って独り言言っちゃったりするんだよね。」


 左馬くんは、ちょっと困ったような顔をして続けた。


「そんな時に『何? どうしたの?』ってガンガン聞いてきて、じーっと顔を見つめてくる奥さんって、ホントたまんないよね。

 まあ、子供っぽくて大人しい奥さんをもらった男は、みんな『育て方』に苦労するもんだけどさ。

 頼りなさそうに見えても、少しずつ成長していく奥さんを見ると、なんだかちょっと満足感があるんだよね。


 一緒にいる時は、可愛らしさで足りないところをカバーできるかもしれないけど、離れてる時に『あれやっといて』って頼んでも、何もできないんじゃ意味ないでしょ?

 遊びも趣味も家事も、自分から何もできなくて、教えられたことしかできないような子には、『奥さん』としての信頼なんて持てないよね。

 だから、そういう子もダメなんだよ。」


 左馬くんは、まるで恋愛ドラマの主人公のように深いため息をついて、こう締めくくった。


(つづく)

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