episode: 005『01 美しすぎる皇子、誕生! ~桐壺の君は運命の子~』
女御が自慢してる幼い皇子たちの美しさをはるかに超えた源氏の美しさを、世間の人は表現するのに「光の君」って呼んでた。
女御として藤壺の宮の寵愛が並ぶものがなかったから、対になるように「輝く日の宮」って呼んでた。
天皇様は源氏の美しい子供の姿をずっと変えたくないと思ってたけど、ついに12歳で成人式をさせることになった。
その準備も全部天皇様自身が指示を出したんだ。
前に皇太子の成人式を紫宸殿でやった時のド派手さに負けないくらい。役人たちの階級ごとのパーティーの準備を役所がするんだけど、それだけじゃ足りないって思った天皇様が「もっと豪華にしろ」って特別に命令したんだ。
清涼殿は東向きなんだけど、庭の前の部屋に天皇様の椅子が置かれて、成人式を迎える源氏の席と、儀式を執り行う大臣の席がその前に用意されてた。
午後4時に源氏がやってきた。
上で二つに分けて耳の所で輪っかにした子供の髪型をした源氏の顔つき、少年の美しさ。「これ、永遠に保存できないのかな...」ってみんな惜しんでた。
髪を切る役目は大蔵卿。
美しい髪を短く切るのを惜しんでる様子だった。
天皇様は「もし源氏のお母さんがこの式を見てたら...」って昔を思い出して、耐えられないくらいの悲しみをこらえてた。
儀式が終わって、いったん控え室に下がって、そこで源氏は服を着替えて庭で挨拶した。
参列者はみんな、小さな宮廷人の美しさに感動して涙してた。
天皇様はもっと自制できない感情があったみたい。
藤壺の宮を迎えてから、時々紛れてた昔の悲しみが、また一気に胸に戻ってきたんだ。
「まだ小さいのに大人の髪型にしたら、美しさが損なわれないかな」って心配してたけど、源氏には驚くほどの新しい魅力が加わって見えたんだって。
儀式を執り行った大臣には、奥さんの内親王との間に娘がいたんだ。
皇太子が後宮に入れたいって言ってたのを断ってたのは、最初から源氏の嫁にしようと思ってたからなんだって。
大臣は天皇様の意向も聞いた。
「じゃあ、成人式が終わった後の源氏の世話をする人もいるし、その人と一緒にさせればいいんじゃない?」
って言われたから、大臣はそれを実現しようと思ってた。
今日の宴会場になってる部屋で開かれた酒宴で、源氏は親王たちの次の席に座った。
大臣が娘のことをほのめかしても、まだまだ若い源氏は何も返事できなかったんだ。
天皇様の部屋から命令で内侍が大臣を呼びに来たから、大臣はすぐに天皇様のところへ行った。
儀式の役目をした人へのプレゼントは側近の命婦が取り次いだ。
白い上着に天皇様の着る服一式で、これは昔からの決まりなんだって。
お酒を飲む時に、天皇様がこんな歌を詠んだ。
「初めての髪結いに、長い人生を誓う心を結び込めたかな」
大臣の娘との結婚にまで言及した天皇様の歌に、大臣はびっくり。
「結ぶ心も深い髪結い。濃い紫の色が褪せなければいいな」
って返歌してから、大臣は清涼殿の正面の階段を下りて挨拶した。
左馬寮の馬と蔵人所の鷹をその時にもらった。
その後で参列者たちが階段の前に出て、役職に応じてそれぞれプレゼントをもらった。
この日の宴会の料理や籠に入った菓子なんかは、全部右大弁が命令されて作ったものだった。
普通の役人にあげる弁当の数や、みんなにあげる絹の箱の多さは、皇太子の成人式の時以上だったんだって。
その夜、源氏は左大臣の家に婿入りした。
この儀式も最高に美しく行われたんだ。
高貴な美少年の婿を大臣は可愛く思った。
姫君の方が少し年上だったから、年下の少年と結婚することを、ちょっと不釣り合いで恥ずかしく思ってたみたい。
この大臣はめっちゃ力持ってたし、姫君のお母さんは天皇様の兄弟だったから、すごく華やかな家だったんだけど、今度また天皇様のお気に入りの源氏を婿に迎えたから、皇太子のおじいちゃんで将来の関白になると思われてる右大臣の勢力なんて比べ物にならないくらい押されてた。
左大臣は何人もの奥さんや愛人から生まれた子供をたくさん持ってたんだ。
その中で、内親王から生まれた子は今、蔵人少将って役職についてる若くてイケメンな貴族様。
左大臣と右大臣の仲は良くないんだけど、その蔵人少将を他人みたいに扱えなくて、大事にしてる4番目の娘の旦那にしちゃったの。
左大臣が源氏をめっちゃ大事にするのと同じくらい、右大臣もこの蔵人少将を大切な婿として大事にしてて、なんかバランス取れてて良い感じだったんだって。
源氏は天皇様が側から離したがらないから、ゆっくり奥さんの家に行くこともできなかったんだ。
源氏の心の中では、藤壺の宮の美しさが最高のものに思えて、「あんな人を自分の奥さんにしたいなぁ。宮みたいな女性はもう二度と現れないだろうな。左大臣の娘は確かに大事に育てられた美しい貴族の娘だけど...」って感じで。
単純な少年の心には藤壺の宮のことばっかりが恋しくて、もう苦しいくらいだったんだ。
成人式を済ませた源氏は、もう藤壺の部屋の御簾の中に入れてもらえなくなっちゃったの。
琴や笛の音の中に藤壺が弾く音を探したり、もう直接は聞けなくなった藤壺のかすかな声を聞いたりするのが、せめてもの慰めになって。だから宮中で夜勤するのが大好きだったんだ。
5、6日は宮殿にいて、2、3日は大臣の家に行くっていう、断続的な通い方を、まだ若いからって大臣は気にもせず、相変わらず婿君を大事にしてたんだ。
新婚夫婦付きの女官たちは、特に優秀な人たちを選んだり、源氏が好きそうな遊びを企画したり、めっちゃ頑張ってた。
宮殿では、源氏のお母さんだった更衣が使ってた桐壺を源氏の夜勤場所にして、更衣に仕えてた女官たちをそのまま使わせたんだって。
更衣の実家の方は、天皇様が修理の役所や内匠寮に命令して、めっちゃ立派なものに建て直したんだ。
もともと築山のある素敵な庭付きの家だったんだけど、池なんかも今回ずっと広くなった。
これが「二条の院」ってやつ。
源氏はこんな素敵な家で、自分の理想の奥さんと暮らせたらなぁって思って、ため息ばっかりついてたんだ。
「光の君」っていう名前は、前に鴻臚館に来た高麗の人が、源氏の美しさと才能をめっちゃ褒めてつけた名前だって、そのころ言われてたらしいよ。
(つづく)
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