episode: 004『01 美しすぎる皇子、誕生! ~桐壺の君は運命の子~』
翌年、皇太子を決める話があった。
天皇様の本音は第二皇子を皇太子にしたかったんだけど、バックに強い人がいないし、誰も賛成しないだろうって分かってた。
逆に皇太子にしたら若宮(第二皇子)の将来が危なくなるかもって思って、誰にも本音を言わなかったの。
結局、第一皇子が皇太子になった。
世間も「あんなに可愛がられてても、やっぱり皇太子にはなれないんだな」って言ってて、弘徽殿の女御もホッとした感じ。
そのとき、若宮(第二皇子)のおばあちゃんが落ち込んじゃって。
「もう更衣のいる世界に行くしかない」って言って、ひたすら仏様に祈ってたんだけど、結局亡くなっちゃった。
天皇様は、若宮がおばあちゃんを亡くしたことでまた悲しんでた。
これは皇子が6歳の時のことだから、お母さんの更衣が亡くなった時と違って、今回は皇子自身も悲しんでた。
おばあちゃんは最後まで「ずっと世話してきた若宮と別れるのが悲しい」って言いながら亡くなったんだって。
それからは、若宮はもう宮中にずっといることになった。
7歳の時に書き初めの式があって、勉強を始めたんだけど、若宮の天才っぷりに天皇様はびっくりすることが多かったみたい。
「もう誰もこの子のこと嫌いになれないでしょ。
母親がいないってだけでもかわいがってあげてよ」
って天皇様が言って、弘徽殿に昼間行く時も一緒に連れて行って、御簾の中まで入れちゃうの。
どんなに強い武士でも、敵対する人でも、この子を見たら思わず笑顔になっちゃうくらい美しい少年だったから、女御も愛さずにはいられなかったんだって。
この女御は皇太子の他に姫君を二人産んでたんだけど、その子たちよりも第二皇子の方が美しかったんだって。
姫君たちも隠れずに、賢い遊び相手として扱われてた。
勉強はもちろん、音楽の才能も抜群だった。
言うと信じられないくらいの天才児だったんだって。マジで主人公補正かかってるじゃん。
そのころ、高麗(今の朝鮮半島)から来た人たちの中に、めちゃくちゃ上手な人相見がいたんだって。
天皇様はそれを聞いて興味津々だったんだけど、亭子院の遺言で宮中に呼べなかったの。
だから、誰にも内緒で、皇子の世話係みたいな感じで右大弁の子どもを装って、皇子を外国人が泊まる
人相見は首をかしげて、こう言ったんだ。
「この子は国のトップになって一番偉くなれる相なんだけど...でもそれが幸せな道じゃないみたい。
国の重要人物になって天皇を支える人としても、なんか違う感じ」
右大弁も中国の学問に詳しかったから、高麗人とのやり取りがめっちゃ面白かったらしい。
詩の交換もして、高麗人は日本を去る直前にこんな珍しい高貴な相の人に会えて、今更日本を離れたくなくなったみたいな詩を作ったんだって。
若宮も別れの詩を作ったら、高麗人が大絶賛して、いろんなお土産をくれたみたい。
朝廷からも高麗の人相見にたくさんのプレゼントがあったんだけど、
その評判を聞いた東宮(皇太子)の親戚の右大臣とかが、第二皇子と高麗の人相見の関係を怪しんだみたい。
なんでそんなに良くしてもらえたのか、納得いかないって感じ。
頭いい天皇様は、高麗人の言葉を聞く前から皇子の将来を見通して、幸せな道を選ぼうとしてたんだ。
だから、ほぼ同じこと言った人相見の能力を認めたってわけ。
「四品以下の無品親王なんかで、弱い立場の皇族にはしたくないな。自分の時代もいつ終わるか分からないし、この子の将来のために最高の地位を用意してやらなきゃ。臣下の列に入れて国の重要人物にするのが一番いいだろう」
って天皇様は決めて、今まで以上にいろんな勉強をさせたんだ。
でも、すごい天才っぽい才能が出てくるのを見ると、「臣下にするのもったいないなぁ」って思っちゃうんだけど、親王にしたら「天皇になろうとしてる」って疑われそうで...
上手な占い師に聞いても同じような答えが返ってくるから、結局、成人式の後は「源」って名字をあげて、源氏の誰それにしようって決めたんだ。
時が経っても、天皇様は桐壺の更衣との別れの悲しみを忘れられなかったんだ。
気を紛らわせようと、美人って評判の人を後宮に呼んだりもしたけど、結局「亡くなった更衣ほど美しい人はいない」って失望するだけだったみたい。
そんな時、天皇様の従兄弟か叔父にあたる先代の天皇の第四皇女で、誰もが美人って言ってる人のこと。
その人のお母さんの皇后がすごく大事にしてる人なんだけど、
天皇様のそばで仕えてる
その内親王の子供の頃のことも知ってるし、今でもたまに顔を見る機会があるから、天皇様にその話をしたんだ。
「亡くなった桐壺の更衣に似た人を、私が三代も宮廷にいたのに見たことなかったんですよ。でも、皇后様の娘さんだけが、あの人に似てるって今気づきました。めっちゃ美人なんです」
天皇様はそれを聞いて、「もしかして...」って思って、前の天皇の奥さんに、その娘を宮中に入れてくれるようにお願いしたんだ。
でも皇后様は「怖すぎ...。皇太子のお母さんの女御がめっちゃ強気で、桐壺の更衣をいじめたこともあるのに...」って思って、話はそのまま流れちゃった。
そのうち皇后様も亡くなっちゃって。
姫宮が一人暮らししてるって聞いた天皇様は、
「女御っていうより、自分の娘みたいに思って世話したいな」
って言って、まだ熱心に宮中に来てくれるようにお願いしてた。
「こうしてるより、お母様のことばっかり考えてるより、宮中に戻った方が若い心の慰めになるんじゃない?」って、お付きの人たちが言って。
お兄さんの兵部卿親王も「そうだね」って賛成して。
それで、前の天皇の第四皇女が、今の天皇の女御になったんだ。
彼女の住まいは藤壺っていう場所。
典侍が言ったとおり、姫宮の顔立ちも立ち振る舞いも、不思議なくらい桐壺の更衣に似てたんだって。
この人は身分的にも申し分なし。
全部がすごくて、誰も悪口言えないくらい。
桐壺の更衣は身分と寵愛のバランスが取れてなかったけど。
新しい女御で傷が完全に癒えたわけじゃないだろうけど、自然と昔のことは忘れられていって、天皇様にも楽しい生活が戻ってきたんだ。
あれだけの恋も、結局は永遠じゃないってことなのかな。
源氏の君(まだ源氏じゃないけど、そうなる予定だから筆者はこう書いてる)は、いつも天皇様のそばにいるから、自然とどの女御の部屋にも一緒に行くことになる。
天皇様がよく行く部屋は藤壺で、源氏もよく一緒に行く。
藤壺の宮も慣れてきて、いつも隠れてるわけじゃなくなった。
後宮の人たちは、みんな自分の顔に自信があって入ってきた人たちだから、それぞれ美人なんだけど、もうみんなだいぶ年いってた。
そんな中に若くて美しい藤壺の宮が現れて。彼女はすごく恥ずかしがって、なるべく顔を見せないようにしてたけど、自然と源氏の君が見ちゃうこともあったんだ。
源氏は母親の更衣の顔は覚えてないけど、典侍が「似てる」って言ったから、子供心に母親みたいな人として恋しくなって。いつも藤壺に行きたくなって、彼女と仲良くなりたいって思ってた。
天皇様にとっては、二人とも最愛の妃と子どもだった。
「彼のことを可愛がってあげて。
不思議なくらいあなたとこの子のお母さんは似てるんだ。
失礼だと思わないで、可愛がってあげて。
この子の目つきや顔つきもお母さんにそっくりだから、あなたたちを母子みたいに見てもいいくらいだよ」
って天皇様が言うもんだから、源氏は子供心に、きれいな花や紅葉の枝を見つけたら、まず藤壺の宮にあげたいとか、自分の好意を受け入れてほしいとか、そんな態度を取るようになったんだ。
今の弘徽殿の女御は藤壺の宮に嫉妬してたから、藤壺の宮に好意を寄せる源氏のことも、一時忘れてた昔の恨みが再燃して、憎むようになっちゃった。
(つづく)
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