第27話迷宮狂い、無視される

「ねぇ。これってどこに行くの?」


「・・・」


「ねぇねぇ。おじさん!聞こえてる!耳が遠いの!!」


「・・・」


刀を持っている男の耳元で大きい声を出すが、一切反応してくれない




(チャームボイス対策か?いや、なんか違うぽいな)


両腕にある手枷を、ガシャガシャと鳴らしながら、今の状況を考える


(収監される訳では無さそうだが、、政治的な争いに巻き込まれたか?)


護衛車の中から外は一切見えない。音はエンジン音だけが聞こえる




「フフーーン。フフフーーーン」


黒剣と手入れ道具を取り出し、黒剣を丁寧に綺麗にしていく




「おい」


「なんですか?」


「それを仕舞え。死にたくなければ」


首元に冷たい刀の刃が、振れる




「嫌どす」


「死にたいのか?」


首元にある刃が少しだけ首に食い込み、少量の血が流れる




「お前こそ大丈夫か?俺が死んだら大変なことになるだろ」


「・・・」


「俺はお前が思っている以上に自分の命の価値を知ってる」


刀の刃を素手で掴み


「お前が俺を殺したら、お前はどうなるだろうな」


首元に刃を押し付けると




「度胸なしが」


「・・・」


男は刀を静かに仕舞った。殺したらダメなのは分かっているみたいだ


「手が痛い」


(素手で刃を握るのは駄目だな。手入れする時に手入れ道具に血が付く)


ペロペロと傷口を舐めながら、傷が治るのを待つ




「うん?護衛車止まったな。信号か?」


ガチャ!


「動くな」


「あ、目的地に着いた感じですか?ご苦労さんご苦労さん」


動くなと言われているが、無視して勝手に護衛車から降りる




「あれ?葉の迷宮じゃん。なんでここに?」


「動くなと言っているだろう」


頭に銃を押し付けられるが、完全に無視して歩き回る


「確かここの近くにあるお好み焼き屋さんが美味しいのよ」


「動くなって!!」


後ろから持ち上げられ、体が浮く。背中には硬い感触が




「よし。そのまま真っすぐだ」


「・・・」


「聞こえなかったか?」


「・・・」


周りにいる人達は一言も発しない。普通に不気味だ




「え?なに?こわ」


少しの時間誰かに抱かれながら、静かに待っていると


「ハハハハ!!」


「聞き覚えのある笑い声だな」


「やあ天満!休みは満喫してるかい!!」


非常に見覚えのある男が、天から天使の様に降りて来た




「帰れ!」


「どうしたんだい天満!元気が無さそうだな!」


西華の兄である男が迷宮狂いの目の前に現れた




「理性の指輪の調子はどうだい?」


「・・・・」


黒剣を素早く振るう


「おっと怖い。その剣を締まってくれるかい?」


指一つで黒剣が防がれる




「安心してくれ。取るつもりは無い」


「・・・ならいい。これを取ったら大変なことになるからな」


「しかし。どこに隠してるんだい?理性の指輪を」


「企業秘密だ」


「まあいいや!それだけを確認したかっただけ!じゃあね!!」


護衛車にまた連れ込まれる

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