第58話 第22周回最終決戦

第22周回 12月31日午後 エルデネサントの野 魔王軍本陣 勇者と呼ばれる男


長かった、本当に長かった…長かった時も遂に終わりを迎える。いや、俺が迎えさせて見せる!

勇者オレは、アドラブルを見るや否や渾身の力で斬りかかった。タスクも勇者オレに遅れまいと続く。一瞬、こちらをまばたきをもって見たアドラブルだったが、俺の姿を認識すると奴はヤツの愛刀思われる曲刀を引き抜き俺とそのまま数合斬り結ぶ。不意という程ではないが、こちらから仕掛けたからか最初は優勢に進んだが、こちらがLv65まであがったとはいえ、アドラブルはのレベルはそれ以上。1vs1では聖剣の援けがあってもこちらが優位とは言い難い。しかしそこに聖女マミアから、様々な支援魔法バフが届き身体の動きのキレが一段階・二段階と上がる。

レベル65の聖女マミアの支援魔法の上昇効果もレベル65の支援を受ける側の勇者オレの基礎ステータスも今までとは一味違う。これならいける。畳みかけるように聖剣をアドラブルに叩きつける、叩きつける、叩きつける。勇者オレは、ここで態勢を崩すが構わない。なぜなら、ここで入れ替わるようにして更にタスクの追撃がアドラブルに入り、奴に息をもつかせぬ攻撃が加わ…



攻撃が…?タスクの攻撃が来ない?


アドラブルの態勢を崩すほどの全力攻撃を加えたが、無理な全力攻撃で勇者オレの態勢はもっと崩れている。そこをタスクの攻撃が繋ぐので、それ自体問題無いはずなのだが、タスクの攻撃が来ない。

来ないなら、必然的に俺より態勢を立て直すのが早くなるアドラブルの攻撃が…


―――ドゴゴオォォォォッ!


アドラブルのカウンターの回し蹴りがキレイに勇者オレの下腹部に決まり吹き飛ばされる。


―――ぐぼぁぁぁぁっ。


勇者オレの胃の中身どころか、五臓六腑を直接ぶち撒けてしまいそうな威力だ。


―――ゴワンッ!


そして、天幕を支える太い木柱に激突して止まる。あまりの衝撃で息が出来ない。


「勇者っ!!!」


悲鳴を上げてマミアが駆け寄ってくる。タスクは…視界の端でアドラブルの側近数人と斬り合っているのが見えた。


そちらはもちろんタスクが優勢だったが、そういう話ではない。なぜタスクが勇者オレの後詰に来なかったのかという話だ。しかしそうか、護衛隊員以外には今まで骨のある敵兵がアドラブル戦に参戦してきた事は無かったから、俺はそっちに全く目が行っていなかったが、何かが変わって今回は無視できないレベルの側近がいたようで、タスクはそっちの対処に取り掛かっていたのか。


むしろ俺の方がアドラブルにばかり目が行って、周りが見えていなかった。本来ならば攻撃力に優れる俺が速攻で側近を倒して、防御に優れるタスクがアドラブルの相手をしてその時間を稼ぐのが正道だ。しかし、俺がアドラブルに一目散に向かってしまったため、タスクが側近の相手をせざるを得なかった。


急いで駆け寄ってきたマミアが一心不乱に回復魔法を俺にかけてくれているが、アドラブルがそんな隙を見逃してくれるわけもなく…だが、タスクはそのマミアの危機に気付き、今倒そうとしている側近を放置してでもこちらに向かおうとしている。だが、そんな隙を見逃してくれる訳もなくその背中に攻撃を浴びていた。それでも強引にこちらに向かってきている。


「マミアー!」


マミアに注意を促しながら、タスクは体を投げ出すようにマミアとアドラブルの間に飛び込んで来ようとしたが、どうしようもなく間に合わない。そんなタスクの注意をも無視して脇目も振らず懸命に俺に回復魔法をかけてくれているマミア。


「勇者、今すぐ動けるようにしてあげるかr…」


―――シュバッ!


そんなマミアの目が大きく見開かれ一瞬動きが止まる。しかし、歯を食いしばるようにしてあと発動までほんのわずかだった詠唱を唱え切ると、一呼吸遅れて俺の体が光に包まれて俺は痛みが引き動けるようになった。一方のマミアは俺にそのままもたれかかってきた。だかその目に光は無かった。


そして、そんなマミアの肩越しに飛び込んできた光景は、たった今無理に飛び込んでこようとしたために無防備な姿をアドラブルに晒したタスクが、アドラブルに呆気なく斬り捨てられる場面だった。頑丈なタスクの事だからまだ死んではいないだろうが、マミアがいない今もう戦線復帰は叶わないだろう。


マミアの身体をそっと横たえてやる。


迂闊だった。油断していた。慢心していたetcetc…。


全ては俺のせいだ。ちょっと今周回はいい感じにこれたから、調子に乗ってしまった。

アドラブルは強い。皆で力を合わせてやっと勝負になるのだ。ちぐはぐな戦いになればこうなってしまうのだ。改めてアドラブルの強さを思い知らされた。


この周回はもう勝てないだろう。

だが、このままでは終われないのだ。事切れたマミアの横顔を見ながら、その手に握る聖剣に力を込めた。マミアの回復魔法のお陰でもう身体は動く。



…そして時は巻き戻った。

皮肉にも勇者単独の力だけであと少しというところまで迫れた勝負だった。しかし聖女マミアがくれた支援魔法バフが時間経過で切れるとそこからは苦しくなった。しかしそこからも執念とも言えるような鬼気迫る戦いを10分以上繰り広げたものの、最後は力尽き敗れた。

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