第6話 護衛隊の最期

「閣下がそれほどまでに苦戦した理由の一つに我らが護衛隊が呆気なく敗れ去ったのがあるのでは無いですか?むしろそうとしか思えず、その事を非常に申し訳なく思います。」


「…。」


確かにその通りなのだが、それをストレートに話すのは憚られた。

何しろ勇者一行は護衛隊と何度も戦いその強さも癖も弱点も知り尽くしている。一方で護衛隊も同じだけ勇者一行と戦っているが、その記憶は継続されないのだから勇者一行と比べるのはフェアではない。


「閣下。」


「…お前たち、護衛隊はいつもよくやってくれている。」


「閣下、私たち護衛隊は閣下に褒めていただくために頑張っているわけではありません。ましてやそのために存在しているのではありません。閣下をお守りする事が出来なければどんな活躍をしたとしてもそこに意味など無いのです。」


「そうは言ってもだな。」


「閣下?もう勇者一行と閣下との間に余力は無いのでしょう?」


「…。」


「閣下、我ら護衛隊は閣下のお役に立ちたいのです。」


「…。」


紅茶をすすり一息つくと、少しだけ話をする事にした。


「…勇者一行は都合15回本陣に押し寄せた。その全てで護衛隊は勇者一行と戦い…奮戦してきた。だがそれゆえに、護衛隊のその強さも行動の癖も全て相手…勇者一行は知ってしまっているのだ。

手の内を丸裸にされていた、そしてその事すら知ることの無い護衛隊。そして途中からは強さすら上回られた護衛隊に何を求める事が許されるというのか!

…実際護衛隊は毎回私のために全力で戦ってくれていたよ。

そんな護衛隊にこれ以上を…」


「閣下!それでもです!

護衛隊は…閣下の護衛隊は泥をすすってでも閣下の役に立たねばならんのです。確かに手の内がバレてその事すら知らずに戦っていたことは非常に苦しい戦いであった事は想像できます。しかし、幸いこれからは閣下より護衛隊がどのように勇者一行に倒されたか聞くことができます。実際に戦った経験の残る相手方よりはいまだ不利ではありますが、それでも手の内を晒された事すら知らずに戦う不利は避ける事が出来ます。

閣下、お教え下さい。我ら護衛隊はどのように倒されたのかを!そしてそれを次回の戦いに必ずお役に立ててご覧に見せます!」


会議室はシンと静まり返る。皆、私の次の言葉を待っているようだ。

再度紅茶をすする。

…仕方ないか。あまり言いたくはなかったのだが。


「…まず勇者どもは非常に口が悪い。」


メンバーを見渡す。皆、私に注目し、私の次の発言を待っている。

ごくりと各メンバーの生唾を飲み込む音が聞こえるようだ。


「ボルガン率いる護衛隊に対して言葉の限りを尽くして、罵倒し挑発するのだ。15回もの周回の経験を生かして護衛隊6人それぞれに最も効果的な言葉を選んでな。

そして挑発してそれぞれ一人ずつ釣り出したところに…

ビッグスは眠りの魔法に弱いので、眠らせておしまい。

ウェッジは麻痺の魔法に弱いので、麻痺らせておしまい。

トマージは石化の魔法に弱いので、石化させておしまい。

ラドクゥは盲目の魔法に弱いので、盲目状態にさせて後回し。

コナタムは幻惑の魔法に弱いので、幻惑状態にさせて後回し。

そして、隊長であるお主

ボルガンは混乱の魔法に弱いので、混乱させて後回しにした二人と同士討ちに。」


そこまで一気に言い切ると思わずその場の雰囲気に耐えられなくなって窓の外の空を見ながら紅茶をすする事にする。

そのあまりの内容の酷さにハキムとエルデネトはぽかんとしている。


「汚い、流石勇者汚い。やっぱり勇者は卑怯者と改名すべき。

というか、思った以上に護衛隊があっさりとやられていてワロタ。」


おい、タリアト。小声で呟いてるのみんな聞こえているぞ。

だがこれで終わらせては流石に護衛隊が浮かばれなさすぎる。


「最初からそうだったのではない。

周回を重ねて何度もお前たち護衛隊と戦うたびに奴ら勇者一行は弱点を探り効率化を図り、状態異常にかかった護衛兵同士がお互いをサポート出来ないように挑発でそれぞれ釣り出して各個撃破するというこんな攻略チャートを組ま…こんな撃破のされかたをするようになってしまったのだ。」


「攻略チャートとか言い得て妙。さすがこのアドラブルできるな。更に推せる。」


おい、タリアト。聞こえているぞ!独り言はもう少し小さな声で話せ!

ハキムとエルデネトは気遣うようにボルガンを見るが、護衛隊のあまりに無様過ぎる結末にかける言葉が見つからないようだ。

ボルガンは顔を紅潮させたり青褪めさせたりと、顔色を非常に忙しそうに変化させながらも俯き終始無言だ。


「次は役に立って見せるとか大言壮語を吐いたが、現実は次とかいう言葉が恥ずかしくなるくらいにあっさりと護衛隊が全滅していたからだろうか。それとも混乱状態で味方護衛隊二人にトドメを刺すという最も酷い状況を作り出していたのが自分自身だったからだろうか…。」


おい、タリアト!それ以上はやめてさしあげろ!ボルガンのHPはもう0よ!?



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あんまり文中に作者からの言葉を入れるの好きじゃないんですが、余りにも嬉しかったのでちょっとだけ。


不毛の大地にも水はあった…。

★どころかPVさえ全然増えなくて割とめげかかってたんですが、★を入れてくれた方がいました。ありがとう!

これでまだまだ戦える!

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