成功者の条件
ボウガ
第1話
オンラインセミナーが開かれている。聞けば“成功者の集まり”といういかにもなうさん臭いセミナーだが、このセミナーを受けるのは、インフルエンサーや動画配信者などの成功者だけが出席するもので、セミナーと銘打っているものの、実は強力なコミュニティでもあった。
AI開発の権威が開発するAIによって、定期的に集まり、世間の流行や雰囲気を話し合い、報告しあう、そのデータをまたAIに学習させる、継続的な協力関係だった。
そこで、これまでになかったような斬新な実験の報告があった。AI開発の権威Iさんが、得意げに語る。
「新型のAIの能力ですけどね、人々が“共感”を他者に“強要”することを利用したものなんですよ」
「それで、その能力って具体的に何なんです?」
「人々が“誰を炎上させ、その時々の倫理で有名人の言動を叩くか”というデータを抽出します、そのデータに適合する有名人は、憎まれ役を買い、その損失分を別の有名人が稼ぐ、よく見ませんか?だれかが炎上、叩かれているときに株を上げる人間、それを意図的に行うんですよ」
「大胆ですねえ、しかし、それでうまくいくんですか?」
「これは約半年間の本格的な実験です、実験対象は、まだ若手でそれほど稼ぎのない動画配信者ですが、この方法で、なんだかんだうまくいってます」
「でも、結局炎上した側が仕事を続けるのはむつかしいじゃないですか?」
「そこも問題はありませんから、“反省の態度”あるいは“強力な信者をつける”この方法があります、今は明らかに人に迷惑をかけたり、加害行為をする配信者も、ファンさえいればなんとかなりますからね」
「でも……良心が痛むなあ」
ふう、とため息交じりに彼は笑って、それから答えた。
「皆さんは自分に才能があって有名時なり、インフルエンサーとなったのは自分が実力があったからと思っているかもしれませんが、実際は違います、世の中のほとんどの人は、興味がないけど、興味を提供してくれるどうでもいい他人を評価し、それが世間に浸透すると、途端に下に見て様々な批評をし始める、あなた方は檻の中に入れられた実験動物です、このセミナーに参加する以前から、世間は、“裁く対象”をつくり、自分を美化することによって、“今の自分たちはこいつの失敗を許せない正義の存在だ”という事を、炎上で人を叩くことよって他者に示すことによって、アピールします、彼ら自身がインフルエンサーを模倣し、まるで自分たちは一度も失敗しなかったかのように、時代とともに移り変わる文化の“裁判官”になるのです、だから炎上はなくならない、だからこそ、業界の地盤を堅牢なものにするためにも、このシステムが必要なのですよ」
成功者の条件 ボウガ @yumieimaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます