第36話 回復アイテムと装備品

「よーし!良い買い物ができたー!」


 宿屋のベッドの上で、今日購入したアイテムを広げ、鼻をふんふんと鳴らすリセチ。


「こうやって見るとたくさん買ったね」


「そうね!アルの装備はもちろんだけど、アタシも全部買い替えたからね!」


 ベッド上では収まりきらず、床にも並んだ装備やアイテム。


「そういえばさ、回復アイテムをこんなに買ったのは何で?ヒーラーのリセチがいるからいらないと思ったんだけど」


 透明で壊れにくい素材で作られたケースに入っている回復液が、床に綺麗に並べられていた。


「あ、これはね中毒を避けるためだよ」


「中毒?」


「うん。人体に回復魔法を短期間で掛けすぎると、効果が極端に弱くなるの。それをアタシ達は『中毒』って呼んでる。もちろん一生ものの症状じゃなくて、数日から酷くても2週間程度回復魔法から離れれば良くなるけどね」


「回復アイテムだったらその症状出ないの?」


「うん。でも回復魔法に比べると、効果が薄いんだよね」


「ふーん。回復って難しいんだね」


 アルは手近な回復アイテムを顔の前まで持ち上げて、透明なケースを左右に軽く振って、緑色の液体を揺らす。


「そうだね。そこがアタシ達ヒーラーの腕の見せどころじゃないかな。相手の戦力と味方の戦力、戦っている場所や状況、それらを一瞬で判断して適切な量の魔力で過不足なく回復させる。よく『戦闘中、全然動いてねーじゃねーか!』って批判されるんだけど、アタシたちヒーラーはその場で起こってる全戦闘を把握しなきゃいけないんだからなんてないの!」


(最後の方、なんか怒ってなかったか?……思い出しイライラ、かな?ヒーラーの扱いって、この国ではあまり良くないんだな)


「アルが回復の重要性を分かってくれたところで、買ったものを一旦全部装備してみよー!」


 装備品に関しては、2人ともVITとAGIの向上に重きを置いて購入した。更にアルに関しては左腕がしっかりと隠れるもの、ということで長袖や丈の長めローブ、大きめのグローブも購入している。


(色々買ったけど、今回一番の収穫はこれだよね)


 アルは右腕の腕輪に視線を移す。銀色に輝く腕輪は自分の髪の色と似ていて、アルはとても気に入っている。


「アタシはこれでよしっと……うんうん、凄く良い感じー!そっちはどう?」


「うん、大丈夫そう……ん?なんか、体が軽いよ?」


 アルは体に現れた変化を楽しむように軽く跳ねてみる。


「よしよし。ちゃんと効果も出てるみたいね。AGIの上昇効果がある装備品は、着けてすぐに効果を感じるから楽しいのよね」


「凄いやこれ!これは能力値で言うと、どれくらい違うんだろ?」

 

「う~ん。恐らく10から13くらいは変わったんじゃないかな。それなりに良いもの買ったからね。今のアルにとってはだいぶ効果が大きく感じるはず。だから今日からの訓練はこの感覚に慣れてもらうため、この装備でやるからね。ついでにその腕輪。ちゃんと魔法が発動するか、試してみよ!」


 興奮が冷めないアルはぴょんぴょんと跳ね回りながら返事をした。


「了解!」


 2人は部屋でしばらく装備の使い方などを話した後、町の外で日課の訓練を行い、終わるとその足で傭兵酒場へと向かった。




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

読んでいて


『RPGで新しい街に行ったらすぐに装備を新調したくなるよな!』


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