第37話 傭兵酒場

「着いた。ここだよ」


「賑わってるなぁ」


 すっかり夜のとばりが下り、多くのお店が閉まる中、逆に活気付くお店があった。


 酒場である。


 町中にはいくつもの酒場があり、たくさんの冒険者が訪れる。


 この傭兵酒場もその1つ。通常の酒場と違い、フリーの傭兵と冒険者が出会うための交渉場として使われているため、酒場ほどうるさくは無いが、店内はそれなりの賑わいを見せていた。


「いらっしゃい」


 リセチとアルが酒場に入ると、入口に立っていた店員の男に話しかけられた。


「お前ら、見掛けない顔だな。ここは初めてか?」


 ここでもリセチは臆することなく返事をする。


「うん。この町では初めて」


(腕輪を買ったグスタフさんのとこでも思ったけど、リセチって初対面でもちゃんとリセチしてて凄い……)


「じゃ念のため説明しとくか。傭兵はこれに自分の情報を書いて、店の掲示板に貼り付けてもらう。基本的には酒場に居れる時だけ、貼っておいてくれ。居ねぇ時に交渉したいやつが来ちまったら、すれ違いで時間の無駄になるからな」


 店員は手に持った羊皮紙をヒラヒラとさせながら説明した。


「で、傭兵はステータスを書いた羊皮紙の他に、これもセットで持っててもらう。指名が入った時はこれが強く光る」


 羊皮紙を持つ手と反対の手が持っていたのは、手のひらサイズの水晶だった。


「冒険者は掲示板を見て気に入った奴がいりゃ、受付にその紙を持って行ってくれ。受付が呼び出すからよ。あとは酒や飯でも食いながら勝手に交渉してくれ。交渉後は決裂だろうが、成立だろうが紙を持って受付に報告。これで終わりだ。で、お前らはどっち側だ?」


 リセチが冒険者だということを伝えると、そのまま店の中に通された。


 店内は非常に広かったが、ほとんどのテーブルが埋まっていた。


 アルはいくつかのテーブルに目をやると、様々な交渉が行われていた。真剣な表情で話し合うテーブル。冒険者が何度も頭を下げているテーブル。女冒険者が色仕掛けをしているテーブル。


「あっち。ほら。あそこに掲示板があるよ」


 アルがキョロキョロと店内を見まわしている内に、リセチが掲示板を見つけていた。


 テーブルの間を縫って先を行くリセチに置いて行かれないように、アルは慌てて後を追った。


 掲示板は壁一面にズラリと並べられており、そこには大量の羊皮紙が大量に貼られてあった。


「ちょっとどいてくれ」


 アルの後ろから細身の男が声を掛けた。


「え?あ、はい」


 アルはよく分からなかったが、理由があってこの場所に立っていたわけではないので、素直にどいた。


 すると、細身の男は羊皮紙を掲示板に押しつけ、持っていた釘のような物を羊皮紙の上部にグイっと刺しこんで去って行った。


(今の人、傭兵か。こうやって自分の情報を書き込んで貼り付けるんだなぁ)


 細身の男の羊皮紙を見てみると、ステータスカードをベースとした情報に、いくつか情報を追加されたものが書かれていた。


―――――――――――

名前:ボンゴコ

ポジション:ラッシュスイーパー

経歴:D-7、C-1

能力値:

STR:  69

VIT:  55

AGI: 59

INT: 20

RES: 18

SEN: 21


習得:剛剣流-中級

契約金:1探索-7万ゼニ

備考欄:巣の中で獲得した素材は、均等割り希望だ。

     共有アイテムを使用した時は、契約金から引いてくれ。

   できればCランクパーティを希望だ。

    契約は短期の契約が希望だが、

    面白れぇパーティなら長期の契約でもいいぜ。その分、安くしとく。

―――――――――――

 

 アルがまじまじと羊皮紙を見ていると、少し離れたところにいたリセチがこちらに駆け寄ってきた。




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

読んでいて


『掲示板を眺めてるだけでも楽しそうだな!』


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