第35話 魔法の腕輪

「おぉ!そんなのもあったな!それなんかアルにピッタリかもしれんぞ?」


 そう言うとグスタフは腕輪を拾い上げてアルとリセチに見せた。


「これはな、どんなやつでも簡単な魔法が使える腕輪、というアイテム……を作ろうとして失敗したものだ」


「あぁ……失敗作でしたか。残念です」


「うーむ。商売人としては失敗作を勧めるのは迷うとこなんだが、正直使ってみてほしい」


 頭を搔きながら困った表情でグスタフにリセチがすかさず質問した。


「ふーん?面白いこと言うのね。使える可能性が少しでもあるならいいじゃない!グスタフさん、その腕輪のこと、もう少し詳しく聞かせてよ!」


「あぁ、そうだな。試す価値はある。えーっと確かこれは――」


 グスタフは、情報を頭から引き出すために目玉を明後日の方に飛ばしながら沈黙した後、ゆっくりと話し始める。


「元々の予定では、腕輪1つにつき1つの呪紋を刻んでおいて、装備した者が魔力を込めれば、発動する仕掛けにする予定だった。」


「すごーい!便利そう!どこが失敗作だったの?」


「使おうとすると発動する時としない時があったんだ。呪紋屋のばあさんに調べてもらったら、呪紋は体との相性があるんだってな。俺は『誰でも使える』をウリにしようと思ってたから失敗ってことさ。ただ、一応試す価値はあるだろ?」


「確かにね。やってみようよ!アル!」


「うん、そうだね!グスタフさん、試してみていいですか?」


「おう!いいぞ!これを装着して腕輪に魔力を注ぐイメージを持ってみてくれ。上手く魔力が入れば腕輪のここが赤く光るはずなんだが……」


 腕輪を右腕に装着したアルが、じっと腕輪を見ながら集中をすると、腕輪の赤い宝石がジワリと赤く光った。


「あ!光った!」


 隣で見ていたリセチがいち早く声を挙げた。


「おぉ!運がいいじゃねぇか!成功だ!」


 グスタフは驚きと喜びが混じった表情でアルの右肩をバンバンと叩く。


「あはは!痛てて……良かったです」


「こんな便利なアイテムがあるんだね!ちなみにこれには何の呪紋が刻まれてるの?」


 リセチは人差し指の指先で腕輪をつつきながら聞いた。


「これには雷属性の下級魔法『紫電』を刻んでる」


「ん!それならアタシも覚えてるからアドバイスしやすい!ねぇ、これいくらするの?アタシ達新米だからある程度安いと助かるんだけどなー」


 リセチは首を少し傾げ、上目遣いでグスタフに迫る。


「そうだな……それなりに、貴重な鉱石も使っているからな。50万ゼニでどうだ?」


「50万は高いー!失敗作でこんなとこに転がしてたんでしょ?それを50万ってどうなの?アタシ達この腕輪が手に入るかどうかで今後の人生が大きく変わるの!もう少しなんとかして!」


「そ、そうか?結構苦心した作品だったもんでな。……なら40万でどうだ?」


「うーん。35万じゃダメー?今後もここで色々買わせてもらうし、それにアタシ達が有名な冒険者になったらここのお店の宣伝するからさー」


(ここでも値切ってる……。これで全てのお店で値切ったことになるな)


「むぅ……今後も買って、宣伝もすると?35万ゼニ……ただ、うーん……。まぁ、いいだろう!若いお前らに先行投資だ!上手く使ってくれ!」


――

―――



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

読んでいて


『果たして本当に魔法を使えるのか?』


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