第30話 講習会終了

「さて、次は巣についてだ。冒険者で巣の危険性を分かってねぇ奴は生き残れねぇ。しっかりと特徴を頭に叩き込んでおけ」


(巣……か。人類の天敵である食人巨蟲が生まれる場所でもあるし、文明の発展に貢献した資源が大量に眠る宝の山でもある。僕はこれを……世界中の巣を破壊しようとしている。……そんなことして、本当に良いんだろうか?人類は、皆は、それを許してくれるのかな)


 アルが人知れず葛藤していると、バオブーンの周りが再度慌ただしく動き出し、巣の絵が描かれた縦長の羊皮紙が設置された。


「これが巣だ。現在ここ『極東大地上界剣神領域』では3つ、世界全体では12の巣が確認されている。その内、人類が既に攻略している巣は、各大陸で2つずつの計6つとなっている」


(12個も巣があるのか!?僕の想像以上に大きな勢力だ……)


「実際のところ、現時点で探索できている内陸部よりも更に奥地に行きゃ、わんさか巣が出てくるだろうけどよ。まっ、今んとこ12個だと覚えておけ」


(僕は一体いくつの巣を潰さないといけないんだ……先が思いやられるな)


「巣には識別番号がある。大陸名と見つかった順だ。例えを出すと、このゴ―シップの町から近い巣は『極東1号』って感じだな」


(僕の村を襲ったのは『極東3号』だったな)


「次は巣の規模だ。規模は『ネストスケール』と呼ばれ、3段階で格付けされている。1は小規模、2は中規模、3は大規模。『極東』には1と2しかない。『魔機成』と『魔帝国』には未攻略だが、ネストスケール3の巣がそれぞれ1つずつある」


 バオブーンは言い終わると、巣のイラストが描かれた羊皮紙の前に移動する。

 

 巣のイラストは縦に切られた断面図のようで、地上と地下に分かれている巣の全貌が見えるようになっていた。


「これが巣だ。てめぇらも先輩冒険者に話くらいは聞いたことあると思うが、俺たちにとっては地下が本命だ」


 地上は煙突のように長細い筒が書かれていてシンプルな構造だが、地下はアリの巣のように小さな通路が入り乱れており、とても複雑だった。


 全体を俯瞰すると、木の幹と根っこのようにも見えた。


「地下には様々な鉱石やアイテムの元となる素材が眠っているが、地上の構造物には何にもありゃしねぇ。ちなみにアレは『タワー』と呼んでる。とんでもなく硬い鉱石でできていて中身は空洞だ。何の用途かわからんが、俺たちに何か攻撃を仕掛けてくるわけでもねぇ」


(あの時見た、でっかい塔みたいなやつ。タワーって言うのか)


 アルは、狂火乱武の馬車から見た景色を思い出す。


(リセチが塔の部分を見た瞬間、食人巨蟲の巣だって判断してた)


「塔が巣の場所・目安ではあるんだが、塔から中に入れるわけじゃねぇ。実際には周辺にある穴から入ることとなる……穴は『ゲート』って呼んでる。元々は食人巨蟲が出入りする穴だったらしいがな」


(それほど塔の外壁が硬いってことなのかな?)


「それと、巣の地下は無限に思えるほど広がってるから、冒険前には必ず地図を購入して、パーティメンバー全員に経路の暗記を徹底しておけ。攻略済みでも未だ危険な通路や広間がある。理由はな――」


 バオブーンは説明をしながら巣の最下層、ひと際大きな空間を指した。


「ここだ。この大きな広間は『女王の間』と言われる場所だ。ここには食人巨蟲をクソみたいに永遠と生み出す化け物がいる。俺たちゃこいつを女王と呼んでいて、巣の最下層には必ず1体は生息しているんだが、こいつがアホみたいに食人巨蟲を生んじまってるから、至る所に食人巨蟲の生き残りがいるんだ」


(無限に広がる地下。食人巨蟲の生き残り。いくら攻略済みと言えど、ナメて掛かると痛い目を見そうだ)


「町で売ってる地図には、食人巨蟲の多い通路や素材が掘られていない場所などのポイントも書いてある。情報は一定期間で更新されていくから、冒険の前には必ず地図の更新をしておけ」


 説明が終わるとバオブーンは大きく伸びをしてから、スッキリとした顔で締めのトークへと移った。


「うっし!Eランクの講習会はこれで以上となる。帰りに受付に寄って、Dランクの昇格を済ませてこい。それとギルドでは色々な講習をやっているから興味があれば受けとけ。多少金は掛かるが死ぬよりマシだろ?」




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

読んでいて


『立体的なマップだと地図の見方も難しそうだな』


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