第28話 講習会③
(か、痒みだって!?なーんだ!ふふふっ、全く怖くないじゃないか)
毒がもたらす効果を聞くまでは、ドキドキしていたアルだったが、拍子抜けの答えに思わず小さく微笑んでしまった。
「この毒を吸ってすぐ、脳が侵され体中が酷い痒みに襲われることとなる。怖ぇのは、毒で脳が壊されちまってるから、毒を吸ったやつは敵が傍に来ようが何だろうが、自分の体を搔き続けることだ。実際に見ねぇと分からんとは思うが、背中を預けられるほど信頼していた相棒が、敵が目の前にいるってのに、座って涎垂らしながら体中掻きむしってる姿は、ショックだった。一生忘れねぇ……」
バオブーンの沈んだ声と表情が、毒狩種の脅威を物語っていた。
「どっかのお偉いさんの研究によると、痛みを感じる部分がマヒして、逆に快感を感じる物質が異常なほど出ちまうんだとよ。今も話に出したが、俺の相棒は、皮膚や筋肉を自分の爪で削りきって尚、骨をゴリゴリ掻いてたぜ。てめぇら腕が痒くなった時、筋肉が削れるまで掻いたことないよな?それが出来ちまうくらいヤバイ毒ってことだ」
アルは話を聞いているうちに、体のいたるところが痒くなってきていた。
「毒狩種は基本的には索敵でピックアップして、遠距離で破壊。それしかねぇ。万が一乱戦の際に爆発させちまった時用の合図と撤退ルートの確保は、パーティ内で徹底しとけ」
(そんなにヤバイのか……合図に撤退ルートの徹底……この辺はリーダーの僕がしっかりしないと!)
「敵についてはこんなもんか。次はポジションについてだ」
話し終えると、再び教官補佐が現れ、食人巨蟲が描かれた羊皮紙を片づけ、違う絵が描いてある羊皮紙を立て板に貼り付けた。
食人巨蟲の時とは違い、初見では理解できない内容だった。
(なんだあれ。同じ大きさの丸印が横に2列。縦に1,2,3。全部で6つ、整列するように描いてある)
「さて、これからポジションの説明をしていくわけだが、その前に軽く陣形について触れておく。陣形に関しては、パーティの人数、シチュエーション、敵の数などの条件によって大きく変化するから奥が深い。今日のところはヒヨッこパーティでも使える代表的な陣形に触れるぞ。今、ここに書いてある陣形は、戦闘時の基本陣形『縦陣形(バーティカル)』だ。ちなみに色々知りたかったら、陣形専門の講習会もあるからそれに出ろ」
(ポジションに陣形……。戦うための情報が多すぎる……)
「改めて、この縦陣形(バーティカル)についてだが、こいつは巣の通路を移動している時に使われる。任務中は大体、巣の通路を歩いてる時間がほとんどだからな、基本この陣形で過ごすことになる。で、なんでこの陣形が良いのかというと、巣の通路では大体前方から仕掛けられるからだ。ちなみに開けた場所、通路が入り組んでいる所、屋外……そういった場所ではこの陣形は不利になる。あくまで前方から敵が来ることを前提としている。それと、この丸印だが――」
そう言うとバオブーンは後ろを振り返り、羊皮紙の丸印を指さす。
「もう分かっているヤツもいるかもしれねぇが、丸印は冒険者を表している。上に書かれている丸印が先頭だ。よって一番前の2つの丸印が前衛、真ん中の2つが中衛。一番後ろの2つは後衛と言う」
(前衛が受けて中衛と後衛が攻撃って感じかな?)
「基本的に俺たちの索敵能力より、食人巨蟲どもの探知能力の方が優れている。だから俺たちは基本受け身だ。敵が来ると想定される方向にまず前衛を配置するのがセオリーだ。前衛で受けて、中衛がメインで攻撃し、後衛は回復や補助。最近は後衛に人数を割かず、前衛に重きを置くパーティが流行っているらしいがな。お前らヒヨッコどもはバランスを重要視しろ」
(バランス……僕達のパーティもバランス良く仲間を集めていきたいな)
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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