第21話 魔力玉

(放ってって言われても!……こ、こうかな?)


 おもむろに左手を肩の高さまで持ち上げ、誰も居ないであろう森に向けた。


 すると、ここでもアルの思いを察したのか、左手の魔力玉は高速で放たれた。


 発射の瞬間、悪魔が金切声を上げたかのような、金属音にも似た高音が発せられ、耳に強い不快感を残した。


 放たれた赤黒い魔力玉は木々を薙ぎ倒しながら進んでいく。


(おいおいおい!どこまで行くんだ!早く爆発してくれ――)


 アルがそう念じた瞬間、魔力玉は数百メートル先で爆発した。


 爆発した瞬間、赤黒い玉は一瞬にして膨れ上がり、木々だけでなく地面までも削り飛ばした。


 爆発地点を中心に発生した衝撃波は森全体を揺らし、木々が順々に倒れる様は衝撃波を可視化させる。


 爆発規模は大きく、細かい砂を纏った強烈な熱風が数百メートル離れているはずの2人の体を叩く。


 衝撃は凄まじく、馬車を横滑りさせ、アルとリセチは数メートル吹き飛ばされて地面に転がった。


(な、なんて威力なんだ……!)


 爆風が落ち着き視界がクリアになっても、魔力玉の驚愕の威力に、しばらくは2人とも身動き一つ取れなかった。


 数秒の沈黙の後、リセチが口を開いた。


「アル、それの管理方法……見つけよ」


――

―――


 2人は現状の確認をしつつ、今後の目標を立てた。


 アルの体は、食人巨蟲の体液が入り込んだことで、通常では考えられないほどの魔力と特殊な魔法が備わった。


 惜しむべくは、食人巨蟲と戦うには物理系能力値が低く、後衛で戦うにしても実戦にはほど遠いこと。


 一日でも早く実戦に向かいたいアルの意向を汲んだリセチは、最低限必要なAGI《敏捷》の強化を提案し、目標を50とした。


 それと並行して、魔力玉のことをもっと研究し、実戦でどの程度使えるのかを検証していくことになった。


「はぁ、はぁ……だいぶ、体が、マシになってきた。リセチー!次、撃っていいー!?はぁ、はぁ……」


 アルはひと際背の高い木の頂上にいるリセチに大きな声で合図を送る。


「人の姿は?っと……無さそうね。アルー!撃っていいよー!」


 現在、アルとリセチはゴ―シップの町に向かう道中で、寄り道していた。


 理由は魔力玉の研究のためである。


 (リセチは、魔力玉が既存の『火』『氷』『雷』『補助』『回復』どの魔法にも属していないと言ってた。しっかり調べないと)


 そして、本日4回目の魔力玉を生成しようと念じた瞬間、気絶した。


――

―――


「ん、アル、おはよ」


「んぁ……あれ、僕、気絶してた?」


「うん、魔力玉が出る前に気絶しちゃった。これでだいぶ結果が揃ったね!」


 初めて魔力玉を発動させた時から、今日で5日目を数えていた。


 当初、朝から夕方までひたすら移動に費やせば、ゴ―シップの町まで3日程度だろうと考えられていたが、アルのAGI強化訓練や魔力玉の研究のために時間を割いている内に、倍の行程になってしまった。


 しかし、その分の結果は出ていた。


 AGIの訓練はコツを掴み始め、少しではあるが早速能力値は上がり始めた。魔力玉の研究も知りたかった性能のほとんどが解明されている。


「じゃ、整理するね!」


 リセチは木の枝をペンのように持ち、子どもの砂遊びのように、地面に性能を書きまとめていく。


――――――

魔力玉

射程:最大約300メートル(アルの任意で爆破可能)

威力:弩級くらい?

制限:1日3回まで/発射後はしばらく動けない/貧血のような症状/発射後は元の呪われた左腕に戻る

――――――


「ふぅ、こんな感じね」


「おぉ、ありがと。……この威力のとこの『弩級』ってのはどのくらい凄いの?」


「えっとね、魔法って大きく分けて『攻撃』『回復』『補助』の3つに分けられてて、それぞれ威力にランクがあるの。攻撃魔法なら、下から『下級』『中級』『上級』『超級』『弩級』『超弩級』『世界』って感じ」


(世界?世界を破壊するくらいの威力なのかな?)



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

読んでいて


『アルの魔法はヤバイ威力だぜ!』


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