第22話 ゴ―シップの町
「それで、弩級の定義なんだけど……。確か『地形が変わるほどの威力』って感じだったかな?ちなみにアタシ、超級までは見たことあるんだけど、アルのは明らかにそれよりも威力があったんだよね。だから弩級って判断にしたんだー。弩級を使えるのは世界で30人って言われてるから、すんんんごい威力だよ!戦闘で使ったら無敵だね!」
「そうなんだ!じゃあこれを使えば食人巨蟲を駆逐できるね!」
「そうだね。でも戦いはそんな甘くないよ?『制限』の欄にも書いたけど、1日3回までしか使えないし、発射後はすぐに動けない……ってか、すぐに動けないってよくよく考えると、かなりヤバイね……使い物になるかな……」
リセチは説明しながら、自分の発言に疑問を持ち始めた。
(そっか、一瞬の隙が命取りだもんな)
アルはギガが一瞬にして絶命した瞬間を思い出した。
考え込むアルをよそに、リセチは続ける。
「しかもかなりの広範囲魔法だから、巣の中では気を付けて攻撃しないと自滅しちゃうかも……」
「うっ……課題が多いんだなぁ……」
「そんな落ち込んだ顔しないでよ!確かにデメリットも多いけど、威力は絶大なんだから、自信持って!」
「ははっ、フォローありがと」
その後も、アルはリセチと諸刃の刃である魔力玉をいかにして使うのかをしっかりと話し合った。
気が付けば日がだいぶ傾いており、2人は急いで野営の準備に取り掛かる。
こうしてゴ―シップの町までの行程が、また1日遅れるのであった。
―
――
―――
「さぁアル、ようやく着いたよ。ここがゴ―シップの町。極東領域の都!他国との連絡船が出る唯一の港町で、攻略済みの巣も近くにあるから『極東領域』で一、二を争うくらい冒険者で賑わうんだよ!」
「わぁ!人がたくさん!」
入口の門をくぐった瞬間、アルは大通りを行きかう人の数に圧倒された。その多くは鍛え上げられた肉体を持つ冒険者たち。
その冒険者たちに商店の人間が大きな声を掛ける。
――武器ならうちに任せな!安いし頑丈!!
――そこのアンタ!回復の薬は持ったかい!?
1人でも多くの客を取ろうと声を張り上げ、笑顔を振りまいている様は、ただ見ているだけでも元気になれる。
「さてっと、アル。感動してるところ悪いけど、最初は冒険者ギルドに行って、色々報告しにいこう。休憩や観光はその後でね!」
「分かった。向かおう」
大通りを行きかう人々の波に溺れそうになりながらも通り抜け、町の中心に差し掛かると、ひと際大きな建物が見えてくる。
「あれが冒険者ギルドだよ」
「おぉ!大きい……!」
ギルドの目の前にまで来ると、その存在感に圧倒された。レンガや石を綺麗に加工して作られた重厚な外観は荘厳さを感じさせる。30メートルを越す建物は、まさに町を象徴する高さであった。
「ところでパーティ組むってことは、やっぱり冒険者登録するの?」
「そうだね。冒険者にならないと何かと不便なんだよね。例えば冒険者じゃないと巣に入っちゃいけない決まりとかあるし」
「あ、そうなんだ。なんで?」
「まずは安全面の管理。ギルドって『誰々がどこどこの巣に向かって何日経っても帰ってこないから救助隊を送るよー』とかやってくれるんだよ。人材は貴重だからね、助ける努力はしてくれてるの。それと、資源の管理。巣の資源は有限だから勝手に他国に持ち出されないように、獲得した資源は全てギルドのチェックが入るの。まぁ他にも諸々……とにかく、ちゃーんと管理されてるってこと」
「そうなんだ。でも色々管理されてると動きにくくない?僕らは食人巨蟲も巣も全部破壊するつもりなんだ。下手したら冒険者の敵になるかもしれないんだよ?」
「そうだね。でも今すぐはできないでしょ?アタシもアルもまだまだ弱い。いっぱい戦って強くならないといけないし、お金もしっかり稼いで装備を充実させないといけない。それと仲間も少ない。どんなにアタシ達が強くなっても、2人じゃ絶対無理。仲間や協力者を集めないと!だから最初はギルドを上手く活用しようよ」
「そっか……僕たちはやることが多いんだね」
「うん。仇を討ちたい気持ちは分かる。アタシも一緒。でも焦ったらダメ。死んじゃったら生き返らないんだから」
死んだら生き返らない。今のアルにはとても響く言葉だった。
「ありがとう、リセチ。……ギルド、入ろうか」
「うん!」
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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『これからの2人の成長に期待だね!』
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