第19話 能力値
「おはよ、アル」
「んぁ、おはよ、リセチ」
「まだ朝早いけど、そろそろ行こっか」
太陽がようやく昇り始めた頃に、リセチはそう切り出した。
アルは、そうだねと頷き準備を始める。
「リセチ、この辺は食人巨蟲の活動範囲からは離れてるの?」
「そうだね。昨日1日掛けて走ったから、だいぶね。でもゴーシップの町まではまだ掛かるけど」
リセチがそう言うと、アルは何やら考え込んでから尋ねる。
「あのさ、僕って訓練したら食人巨蟲と戦えるようになるかな?もし、リセチが良ければ、ゴーシップの町に行くまでに、何でもいいんだ……戦い方を教えてくれない?」
「うん。いいよー」
あっさりと許可された。
喜ぶアルにリセチはただし、と付け加える。
「でも、すぐには戦えるようにはならないとは思うけど」
「やっぱり魔法を覚えてないから?」
「もちろんそれもあるけど、もっと色々問題はあるよ。例えば物理系能力値があまりにも低すぎるとことか」
(能力値が上がって喜んでたけど、成人の正常値になっただけだもんな……冒険者の人たちからしたら、そうなるよね)
「物理系能力か。僕はどの能力がどれくらいあればいいんだろ?」
「そうだなぁ。戦いでの目標や目安って難しいからなぁ……『絶対にこれじゃないとダメなのかー!』っと変に決めつけずに聞いてもらえる?」
「うん。分かった!」
「目安は……AGI《敏捷》50!」
「おぉ……ん?AGI《敏捷》だけ?」
「うん。とりあえずアルは魔法系・後衛タイプだからSTR《筋力》は捨てて、VIT《耐久》もこの際捨てる!」
「ちょ、ちょっと待って!VIT《耐久》いらないの!?STR《筋力》はなんとなく理解できるけど……」
「うん。捨てちゃう。だって、アルが何年も努力してVIT《耐久》を50とか100とかにしても、食人巨蟲の攻撃ですぐ死んじゃうしね」
何年努力してもすぐ死ぬ。この言葉はアルの言葉を詰まらせた。
「ギガがやられた瞬間って見てた?」
「うん。速すぎてほとんど残像だったけど、針が脇腹に刺さった時は動きが止まったから見えたよ……」
「ギガのVIT《耐久》は80あったの。それであれだよ?」
(80で一瞬……食人巨蟲はいったいどれだけ攻撃力が高いんだ)
「まぁまぁ、そんな絶望した顔しないで。STR《筋力》とVIT《耐久》を捨てた分の時間をAGI《敏捷》にぜーんぶ回してみっちりトレーニング!そしたら半年くらいで50は行くと思う。能力値が低いうちは伸ばしやすいし!」
リセチは得意げに語る。
「そもそも、アルの魔法がめちゃめちゃスッゴイ威力を持ってても、相手が見えなきゃ当てられないでしょ?AGI《敏捷》が高ければ相手の動きがしっかり見えるようになって、正確に魔法を当てられるの。そんな感じで、相手を攻撃するためにも必要だし、相手の攻撃を躱すためにも必要なの。攻・防どちらにも必要ってわけ!」
「なるほど。それなら一石二鳥ってわけだね。さすが先輩冒険者!」
「ふふんっ!そうでしょうそうでしょう!ってことでゴーシップの町に付くまでの数日は猛特訓ね!」
「オッケー。あ、そー言えば冒険者になるためには『能力値の壁を超えないといけない』って聞いたことがあるんだけど……」
アルは村長の冒険者時代の話を思い出していた。
「お、アルよく知ってるね!一番知られてるのは『30の壁』その次は『100の壁』って言うんだー。一般人が普通に生活してるだけでは、能力値はどうしたって30を超えないの。徹底的なトレーニングと壁にぶつかっても諦めない忍耐力……それが必要でね。冒険者になるためには、30の壁を一度は超えないといけないって言われてるんだよ」
「一度?何度か超えないといけないの?」
「6つのステータスにそれぞれ壁があるからね。」
「そうなんだね。僕は魔法系の能力値は全部飛ばしちゃったから、AGI《敏捷》で味わうことになるんだろうな。諦めずに頑張ろうっと」
(っとなると、後は攻撃手段か。能力値はあるのにそれを活かす攻撃手段が無いなんて……この左腕が役に立ってくれればなぁ)
ローブに隠れた左腕に視線を送りながら、そんなことを考えていると、突如として左腕が暴れだした。
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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