第18話 結成
火が落ちるころにはキャンプポイントに辿り着き、2人で小さなたき火を囲った。
「リセチさん」
「ん?なーに?」
手のひらより大きなキノコを串刺しにして、たき火で焼いているアルが、キノコから目を離さずに質問する。
「テテチテさんって、本当に死んじゃったの?」
「うん。3番目だった」
リセチの声のトーンは変わらない。アルは質問することが精一杯で、表情を見る勇気までは無かった。
キノコが焦げないように、串をゆっくりと回す。
「テテチテはね、最初に利き腕を持っていかれてた。それで焦ったんだろうね……敵に背を向けてこっちに走って来ようとしたところを……やられた」
ゆっくりと語るリセチの声だけを聞いていたアルだったが、徐々にリセチの顔を見たいという好奇心に駆られる。
アルは、ゆっくりとそして僅かに顔を動かし、横目でリセチを盗み見たが、泣いてはいなかった。火をじっと見つめて、まるで昔話をするかのように、優しい顔だった。
「あれが利き腕じゃなかったら、もう少し冷静に立ち回ってたかも。あの人ビビりだったからなぁ。でも弱かったわけじゃないんだよ?」
リセチはアルの方に顔を向けた。不意を突かれたアルは咄嗟に顔を背けたが、あまりの不自然さに恥ずかしくなった。
「テテチテの器用さをギガや周りの連中は分かってなかっただけ。色んな剣も扱えたし、弓だってそれなりにいけてたなぁ。それと魔法も。魔法を軽んじるこの国じゃなかったらもう少し重宝されたと思うんだ」
「そっか。凄い人だったんだ」
「うん、まぁまぁ凄かった」
「そっか。まぁまぁか」
「ねぇアル君」
「ん?」
「アタシとパーティ組まない?」
脈絡の無い誘いにアルは言葉を詰まらせた。
「前も言ったけど、僕が食人巨蟲と戦いたいのは、お金稼ぎが目的じゃないからさ」
「そう言ってたよね。だから一緒にやろ?って誘ったの」
「どういうこと?」
「なんかさ、アタシも食人巨蟲にムカついてきちゃったんだー。尊敬してた人も仲良くなった人も……みーんな殺されちゃった。テテチテが『自業自得だ』って言うのも分かるんだけどね。でも、やっぱり心がザワザワする。こういうの割り切れない、っていうのかな?」
「そうかもしれないね。……割り切れない、うん。割り切れないよ。人が死ぬって……やっぱり悲しいよ」
「だからさ、アタシ達で食人巨蟲を全部やっつけちゃおうよ!この大陸だけじゃなくて、ぜーーんぶの大陸の虫どもを!そしたらスッキリしそうじゃない!?」
「あははっ!それいいね!」
「よしっ!じゃあ決まりね!そしたらリーダーはアルで、アタシがサブリーダー!」
「え、僕がリーダーなの!?」
「そりゃそうだよ!最初に食人巨蟲を駆逐したいって言ったのアル君だもん。アタシはその考えに乗っただけだし!ってことでよろしくね、新米リーダー!」
「そっか、そんなものか。分かった。頑張るよ」
「あ、それと……お互い呼び捨てにしよ。戦闘の時面倒だし。いいよね?アル」
「うん、長くなるもんね。いいよ、リセチ」
なんとなく2人は照れ笑いを浮かべた。
アルがふとキノコに目を戻すと、少し火に当てすぎたのか、焦がしてしまっていたので、慌ててたき火から引き上げる。
食事を終えた後は、リセチに見張り番のポイントを教えてもらい、交互に見張りをして夜を明かした。
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読んでいて
『アル達の冒険が始まったな!頑張れ!』
と思ったら、★評価、フォロー、♡での応援をお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます