第15話 戦闘

 アルが誤魔化した直後、左右の茂みや木々の間から葉の擦れる音が聞こえ始める。


  それを察知したギガが、メンバー全員に発破をかけた。


「さぁ!来るぞお前ら!締まっていけよ!?」


 「「「「おう!!」」」」

 

  戦士たちの低い返事は、重なり合い獰猛な獣の唸り声のように聞こえた。


  その声を皮切りに、左右の茂みからザイン村を襲ったバッタ似の食人巨蟲が3匹飛び出してきた。


(き、来た!?魔力の込め方を早く覚えないと!)


「テメェら!こんなザコ数匹、さっさと殺っちまうぞ!」


  ギガが叫ぶと、各々突撃種に飛び掛っていく。


  一見、ごちゃごちゃになっているように見えて、同じ個体を狙っているメンバー同士で声を掛け合ったり、周りとの距離を測るなどの細かい連携プレーが見られた。


(凄い!全く苦戦してない!)


  ヒット&アウェイの戦法で削られた突撃種から、紫色の血が吹き出し始める。


(連携も取れてるし、強い!)


  食人巨蟲の体が血だらけになる頃には、徐々に動きが鈍くなり、地面に崩れ落ちていく。


「第二波!来るぞ!」


  誰かの叫び声と共に突撃種の増援が5匹現れる。


「アル君!アタシが『魔力!』って大声で叫ぶから、そしたらちょーだいね!」


「は、はい!」


(ヤバいヤバい落ち着け落ち着くんだもう一度やるんだ僕!)


  アルは浅い深呼吸を繰り返しながら、『溢れ出す何か』を模索するが、まるで枯れた井戸のように何も出てこなかった。


(やっぱり湧き上がってこない!というか、敵のことが気になりすぎて集中できない!怖い!!)


「くっ!第三派!2体!来るぞ!」


「クソ!数が多い!テメェら!陣形を崩さず後退!後退だ!」


  突撃種を倒すスピードを上回る速さで増援が来てしまい、ギガは堪らずに後退を指示する。


「こ、後退って!馬車どうすんの!?」


「リセチ!テメェまだ暇だろ!オメェが動かしとけ!」


「えぇ!?もうっ!アタシが見てない間に死んでも知らないからね!」


  防戦一方になったが、今のところ怪我人は出ていなかったので、ヒーラーの出番は無かった。


「アル君も乗って!」


  アルが言われるがまま乗車した瞬間、馬車は急加速で反転をしながら安全な位置まで移動した。


「これでよし。ギガ!!こっちはいつでも逃げられるよ!」


 御者の席から最前線で戦うギガに向かって大声を張り上げると、ギガの焦った返事が聞こえてきた。


「リセチ!崩される!戻ってこい!」


「了解!アル君は馬車の中に居てね!」


 リセチは文字通り、目にもとまらぬ速さで戦線に復帰し、ヒーラーとしての役割を努める。


 防戦一方だった前線は、アルが少し目を離している間に窮地に陥っていた。


 戦っている人数は半分になり、残りの半分は後方に下がってリセチに回復魔法を掛けてもらっている。


(目を離したのは一瞬なのに!こんなに崩されてしまうのか!)


 戦いの恐ろしさを目の当たりにしていると、巣の方角から何やら飛んでくるものが目に入った。


(何か……飛んで、来る?影が3つ。いや4つ。鳥か?)


 アルが鳥と認識したそれは、明らかにこちらに向かって飛んでくる。


 羽は生えているが、鳥のそれではなかった。


(あれは鳥じゃない!蜘蛛……の体に虫の羽!)


 アルが気付いた瞬間、ギガの大声が響き渡る。


「上空!飛行種だ!気を付け――」


 ギガの声が途切れてからは早かった。



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


読んでいて

『ギガは意外とリーダーできるんだな!』


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