第13話 特定
「おい!2人とも見ろ!この辺じゃないか?」
少し前を歩いていたテテチテが大きな声を挙げる。
その声にアルはいち早く反応し駆け寄ると、そこは地面や周辺の木々などに激しい戦いの跡が残る場所だった。
太い木々はなぎ倒され、地面は抉れ、破壊の嵐を逃れた数少ない草花には、どす黒い液体がこびりついていた。
「そ、村長は!?生きてるの!?逃げた跡はある!?」
アルの焦りが行動となって現れる。見かねたリセチが止めに入った。
「アル君!落ち着いて!焦ってたら見えるものも見えなくなっちゃうよ?」
「ご、ごめん。落ち着け……落ち着け――ふぅ……よし。うん、もう……大丈夫そう。ありがとう」
リセチの心配そうな顔を見たアルは、やや大げさに落ち着く素振りを見せた。
アルが表面上の落ち着きを取り戻した後、周辺の調査を開始する3人。
開始後数分で、リセチが何かを発見した。
「ねぇ!2人ともちょっと来て!」
リセチが見つけたのは、何か重いものを引きずった跡だった。
「こりゃぁ、村長さんが敵に重傷を与えて敵が逃げ帰った跡じゃねぇか!?ここの村長さん、昔はなかなかの冒険者だったと聞いてるぜ!おい!アル!良かったじゃねぇか!」
少し間が開いて返事が返ってくる。
「いや……そうじゃないみたいだ」
テテチテの明るい問いかけに返ってきたのは、怒りと悲しみに震えたアルの声だった。
テテチテに背を向け、茂みの前でしゃがんだまま答えるアルに、リセチがたまらず声を掛ける。
「アル君、どうしたの……?」
「これ……見て」
「!?」「!!」
アルが茂みから取り出したのは、人の右腕だった。握ったままの形で固まった手には剣が握られており、手首には昔アルがプレゼントした安物のブレスレットが着けられていた。
アルの腕の2倍はあろうかという太さの腕、それを見るアルの目には光は無い。
腕の持ち主がどうなってしまったのかの答え合わせを、アルは誰よりも早く終えていた。
「これで……僕だけになってしまった。ザイン村で生き残ってるのは……僕だけ。もう……誰も、いない」
アルは膝から力なく崩れ落ち、そのまま気を失った。
―
――
―――
アルは体全体に振動を感じて目を覚ました。
目を開けるとそこは幌馬車の中だった。空間魔法で大部屋のように広がった幌馬車の天井は馬車にしては異様に高い。
「あ、起きた。おはよ、アル君」
アルの目覚めに気付いたリセチが近寄ってきた。
「おはよ、リセチさん。僕はどうしたんだろ?」
「アル君は気絶してたんだよ。村に置き去りにする訳にも行かないんで、またアタシたちの馬車に連れて来ちゃった」
リセチがアルを気遣うように、優しく経緯を説明する。
「そっか……気絶か。迷惑掛けちゃったね。ごめん」
「ん。気にしないで」
よいしょ、とアルは上半身を起こし、あぐらをかいて座る。
「ところで、今どこに向かってるの?」
アルは湿っぽくなりそうな雰囲気を感じて、話題を変えた。
「ジケニアの町に戻ってる最中だよ。ギルドへ報告しないといけないからね」
「そっか。調査してたんだもんね。結局村を襲ったのは何処の巣だったの?」
「なんとなく予想はしてたけど、ザイン村から西の方角にある未攻略の巣だったよ。巣の
巣の攻略とは、巣の最深部にいる主を倒すことを指す。
主の討伐後、ギルドが巣内部の調査を行き、規定以下の危険度と判定されれば、正式に「攻略」とされる。
また、巣の
今日まで、人類はネストスケール2まで攻略出来ているが、近頃は『そろそろ次のステージへ行くべきでは?』という声が各国でチラホラと上がり始めている。
「そうだよね。その他の巣は攻略済みの巣だし。あそこしか無いよね。それで、何で食人巨蟲が活動範囲外のザイン村を襲ったのかは分かった?」
「ううん。分からなかった……。食人巨蟲の移動の形跡は至る所に残っていて、紛れもなく『極東3号』から来てるってのは分かったんだけど……」
リセチが申し訳無さそうに答えると、アルは気のない返事をしながら、外の景色に目を移した。
「……あれ?ねぇ、リセチさん。僕達ってジケニアの町に向かってるんじゃないの?」
質問に違和感を覚えたリセチは、アルの隣まで移動し、景色を確認した。
「ん?そだよ。それがどうしたの?……えぇっ!」
景色を見た瞬間、リセチは質問の意図を理解した。
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
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『ザイン村全滅悲しい……』
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