「内なる健康、語らいの時」

 さくらハウスのリビングは、珍しく静かな雰囲気に包まれていた。鷹宮澪、小鳥遊詩音、月城にこの三人が、それぞれ異なる表情でソファに腰掛けている。


 澪は仕事から帰ってきたばかりで、普段のきりっとしたスーツ姿とは打って変わって、ゆったりとしたジョギングウェアに着替えていた。髪は無造作にポニーテールでまとめられ、顔には疲れの色が見える。


 詩音は大きめのTシャツとレギンス姿で、髪はいつものようにまとまりのない巻き毛。彼女の手には、スマートフォンが握られており、何かを熱心に検索している様子だ。


 にこは、シルクのパジャマに上質なガウンを羽織り、優雅な佇まいを保っている。しかし、その表情には珍しく悩ましげな色が浮かんでいる。


「ねえ、みんな」


 にこが、ためらいがちに口を開いた。


「ちょっと、デリケートな話なんだけど……」


 澪と詩音は、にこの様子に気づき、真剣な表情で向き合った。


「どうしたの、にこ?」


 澪が優しく尋ねる。


「実は……最近、お通じの調子が良くなくて」


 にこの言葆に、澪と詩音は少し驚いた表情を見せたが、すぐに共感の色を浮かべた。


「あ、わかるわ」


 澪が頷く。


「私も実は悩んでたんだ」


 詩音も小さな声で言った。


 三人は顔を見合わせ、少し照れくさそうに笑った。


「みんなも同じだったのね」


 にこが安堵の表情を浮かべる。


「そうね。仕事のストレスもあるし、不規則な生活リズムも影響してるのかもしれないわ」


 澪が考え込むように言った。


「私は、締め切りに追われて食事が不規則になりがちで……」


 詩音が申し訳なさそうに言う。


「私も、美容のために食事制限をしすぎたのかもしれないわ」


 にこが反省の色を浮かべた。


 三人は、それぞれの生活習慣や食事について詳しく話し始めた。


「私ね、最近オーガニックの食物繊維サプリメントを試してるの」


 にこが言う。彼女は立ち上がり、キッチンから小さな瓶を持ってきた。


「これよ。天然のプシリウムハスクが主成分で、腸内環境を整えてくれるのよ」


「へえ、それ効果あるの?」


 詩音が興味深そうに瓶を覗き込む。


「ええ、少しずつだけど、効果を感じてるわ」


 にこが頷く。


「私は、ヨガを始めたの」


 澪が言った。


「体を動かすことで、腸の動きも活発になるみたいよ」


「それ、いいね!」


 詩音が目を輝かせる。


「私も何か運動始めようかな」


「私はね、発酵食品を積極的に取り入れてるんだ」


 詩音が言う。


「特に、手作りの甘酒がお気に入り。腸内環境を整えるだけじゃなくて、美肌効果もあるんだよ」


「まあ、それは興味があるわ」


 にこが食いつくように言った。


 三人は、それぞれの対策方法を共有し合い、時には笑いながら、時には真剣に話し合った。


「でも、やっぱり基本は食事よね」


 澪が言う。


「そうね。バランスの取れた食事と、十分な水分摂取が大切だわ」


 にこが同意する。


「あと、規則正しい生活リズムも重要だよね」


 詩音が付け加えた。


 話し合いが進むにつれ、三人は自然とキッチンに移動していた。にこが、腸内環境に良いというハーブティーを淹れ始め、澪が冷蔵庫から野菜を取り出し、詩音がミキサーでスムージーを作り始めた。


「これ、私のお気に入りのデトックススムージーレシピなんだ」


 詩音が説明する。


「ケールとバナナ、それにチアシードを加えてるの」


「おいしそう」


 澪が言いながら、野菜サラダを作っている。


「このドレッシングは、オリーブオイルとレモン汁がベースよ。消化を助けてくれるの」


 にこは、ハーブティーの香りを楽しみながら言った。


「このブレンド、ペパーミントとフェンネル、カモミールよ。胃腸の調子を整えてくれるわ」


 三人は、それぞれが作った健康的な食事を囲んで、再びリビングに戻った。


「ねえ、こうして話し合えてよかったわ」


 にこが、しみじみと言った。


「そうだね。恥ずかしい話題だけど、みんなで共有できて安心したよ」


 詩音も同意する。


「そうね。これからは、お互いの健康にも気を配りましょう」


 澪が提案した。


 三人は、にこの淹れたハーブティーで乾杯した。


「健康的な腸内環境に乾杯!」


 詩音が明るく言い、三人は笑い合った。


 この夜の会話は、彼女たちにとって新たな気づきをもたらした。体の内側から健康であることの大切さ、そして何より、どんな話題でも分かち合える友情の素晴らしさを、改めて感じたのだった。


 窓の外では、満月が優しく輝いていた。さくらハウスの三人は、心も体も軽くなった気分で、新たな健康への一歩を踏み出す準備をしていた。


(了)

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