守るべきものは...
そんな感じで雑談をしていると突然後ろから声をかけられた。
「おうおう、そこのカップルさんよぉ?ちょっといいかぁ?」
「え、えへへ。俺らはそんなんじゃ…」
神村は照れくさそうに頭をかいて否定しながら振り返りその顔を見るやいなや、
「「あ!!」」
思わず、声を上げた。相手も同じように声を上げた。それもそのはず彼らは昨日あったばかりの3人組だったからだ。
「昨日の体を求めたチンピラたち!?」
「何もかもちげぇ!チンピラでもねぇし、体求めてもねぇし!ってか、そんなことはどうでもいい!どうやったかは知らねぇが、気づいたら気絶してて、通りかかったサツに起こされたんだけどよ!ありのまま伝えたら、「でも仕掛けた方が悪い」っつって、そのまま事情聴取されたんだぞ!?俺らの顔に泥塗りやがって!」
「正論じゃん。」
「う、る、せぇ!!」
そう怒鳴ってチンピラはグーで神村の頬を勢いよく殴った。
「いっ!」
思わず声を出してその場にしゃがむ神村にチンピラたちはゲラ笑いをする。
「俺らに楯突いたらどうなるのか、これでわかったろう!?ハッハッハ!そうだ!そこの彼女をこいつの前で犯そうぜ…ん?なんだァ?」
神村は強く殴られたにも関わらず恐れずに御厨とチンピラの間に手を大きく広げ、立ち塞がった。
「俺はいくら殴っても構わんが、こいつには絶対に手を出すな。」
いつもの笑顔を真顔にしてチンピラ達を睨みつける神村。
「おうおう!泣けるぜぇ!じゃあ、俺らが飽きるまでお前がそこに立ってたら彼女は犯さねぇよ!その間お前が手を出すのは禁止だ!はい!決まり!じゃあ!2発め、ブハッ!」
「じゃあ、私に2発目を譲ってくれるか?」
その雄弁に語っていた口を塞ぐかのように拳が神村の後ろから飛んできた。そのパンチを食らったチンピラは後ろの方へ吹っ飛んで行った。
そのパンチを繰り出したのは言わずもがな御厨、いや、宵夜だった。
神村君と二人で楽しくひやひやしながら帰っていると、突然声をかけられた。神村君が後ろを振り向いたら突然驚きの声をあげた。
私もその声に思わず、振り返るとそこには私が昨日ボコボコにしたチンピラ3人組がいた。
もちろん宵夜になればこんな奴ら、簡単に倒せる。しかし、周りを見たら見晴らしのいい道だった。こんなところで暴れて学校の誰かに見られたら私の評判が終わる。そう思い、静観を貫く。
しかし、神村くんが殴られ、立っているのが私とチンピラだけになった。仕方ないと宵夜になろうと思ったら、そのチンピラと私の間に人影が立ち塞がった。
「俺はいくら殴っても構わんが、こいつには絶対に手を出すな。」
…その姿に驚いたのは言うまでもない。神村君は私のあの戦闘能力をみて、なお私をまだ守る対象として見ている。おそらくこの開けた場所では宵夜が出て来れないと判断した。
私、御厨明日香を守るため、彼は恐怖と痛みを押し殺し、立ち塞がった。
優しくて、でも、あまりにも頼りなさすぎる背中。その彼が、理不尽な理由で殴られようとしている。
あぁ、私は一体何を迷っていたんだ?
…助けたい。守りたい!真っ先にそう思った。私の評判?そんなもの、誰も見て無ければノーカンだ!気づいたら右足で地面を蹴って饒舌に語っていたチンピラの頬に拳を捻りこんだ。
「じゃあ、私に2発目を譲ってくれるか?」
私が倒れたチンピラに吐き捨てると、後ろから焦ったように話す神村の声が聞こえた。
「も、もしかして、宵夜か!?こんな明るい時にこんな場所で力を発揮して誰かに見られたら…!」
やっぱり、神村くんは優しいな。そして、その優しさに答えるように、私は宣言した。
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