7枚目
それから先輩と駅に戻って、ベンチで一晩明かしました。翌日、暑苦しさでぼくが目を覚ました時には、先輩の姿はどこにもなくて、時刻表を見ても、まだ始発も通っていない時間でしたから、先に電車に乗ったとも思えませんでした。ただ、ぼくはそれ以上先輩を探そうとはしませんでした。
ぼくは、来た時と同じように電車に乗って、街の方まで戻ると、途中の駅で便箋と、封筒とを買って、この手紙を書き始めました。結局、最初の書き出しだけで何度も書き直したし、全部書き終わるまでもう一日かかってしまったけど、ようやくここまで書き進めることができて、良かったと思っています。
父さん、母さん、ぼくは今、とても楽しい気持ちでいます。この気持ちを表現するのに、ありきたりな言葉なのかもしれないけれど、これが、きっと、幸福というのかもしれません。
先輩は、ぼくの幸福は一時のものだと言いました。そして、ぼくはその一時を、一時のまま終わらせることができる方法を知っています。
P.S.
先輩のことは探さないでください。また、他の人にも教えないでください。
きっとそれを聞いた人たちは、ぼくの気が狂ってしまっていたのだと、結論づけてしまうでしょうから。
幸福のための一番簡単な方法 森野枝 直瑞(もりのえだ すぐるみ) @xxyyyzz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幸福のための一番簡単な方法の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます