私が見たものは・・・・。

星之瞳

第1話

半世紀ほど前私が通った高校は、終戦間際の特殊爆弾の被害にあい、多くの人が亡くなったといういわくつきの高校だった。

被災した古い建物を補修しただけで使っているので、正直ぼろぼろの学校だった。

歪んで開かない鉄枠の窓。ささくれ立ったろうか。冬は隙間風が入り寒い。

講堂はハトの住処になっていた。その日に慰霊祭が行われるのもなんとなく異様に感じていた。

そうゆう学校だから、だれかれとなく多くの噂が立った。

「ある先生がね、ハトの顔を見たら戦時中に亡くなった教え子だったそうよ」

「3階の鏡ははめてもすぐ割れるからはめられなくなったんだって」

「2階の鏡ってさ、近くはまっすぐだけど、遠くは曲がって映らない?薄気味悪いよね」

「幽霊を見たって人がいるそうよ」

「合宿していたら急に電気が消えたって」

2階の鏡がおかしいのは私も感じていたが、そのほかの事は聞き流していた。


日が落ちると学校内で一人で行動しない。暗黙の了解があった。


ある日、部活帰りに階段を下りていた私は、薄暗い教室に一人の女子生徒がうつむいて座っているのを見かけた。

「あれ、居残り?珍しいな」そう思いながら、通り過ぎたのだが、後日同じ階段を下りていて、私はあることに気づく。あの少女のいた教室は階段から教室内は見えないのだ。私は立ち止まり、もう一度階段を登って確認しながら降りた。やはり教室内は見えない。私はぞっとなった。『あの日見たものは何だったの?それに今の制服とは違っていたような・・・』独り言をつぶやく。しばし呆然としていたが、見間違いだと無理やり自分を納得させた。


学校は移転し、校舎は取り壊され、別な施設が建った。あの時の事を確認するすべは無い。




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