第5話
私達がやってきたのは、池の近くにある小さな洞穴だった。
「意外と簡単に見つかったね」
「さっき探していた時に偶然見つけたんだ」
「ここがツチノコが住んでいる場所なの?」
「それは分からないけど……入口にはいないみたいですね」
「まあ、すぐに見つかるとは思っていなかったけど……」
「でも、この中にツチノコがいたらどうしよう?」
「その時は捕まえればいいわ」
カエデちゃんがさらりと言う。
「そんなこと言って……もしツチノコがいなかったら?」
「その時は諦めて帰るしかないでしょう」
「えぇ……」
カエデちゃんの言葉に私は不安になる。やっぱりこの子怖いかも……
「とりあえず入ってみましょう」
「うん……」
恐る恐る中に入る。薄暗い通路が続いていた。奥の方へ進む。
「何もいないね……」
ミハルちゃんが呟いた。
「もしかしたら、一番深くにいるのかしら?」
「あるいはもう既に帰ってしまった可能性もあります」
「だとしたら無駄足になっちゃったね」
「でも、まだ諦めるのは早いですよ」
「えっ?」
「もし本当にツチノコが帰ったのなら、ここには新しい這った跡が残っているはずです」
「あっ、本当だ。確かにあるよ!」
ダイスケ君の言葉にミハルちゃんが反応する。確かにそこには何かの通った跡があったがこれは本当にツチノコの通った跡なのだろうか。私には判断が付かないが詳しい人に頼ろう。
「おそらくツチノコは一度ここに来たんでしょう。しかし、往復した跡はない。これはおかしいと思いませんか?」
「確かに……別に出口があるのかしら?」
「入っただけで出てはいないんじゃない?」
「それなら、この痕跡を辿ればツチノコがいる場所に行けるかもしれません」
「なるほどね」
「では、早速行きますよ」
私達は先に進むことにした。
しばらく進むと大きな空間に出た。そこは今までよりも明るく、天井も高い。そして、そこには――ツチノコがいた。
「ツチノコだ!」
「やったぁ!」
「まさかこんなところで会えるなんて!」
みんな大喜びでツチノコに近づこうとする。だが、私は奇妙な違和感を覚えた。
「待って! 様子が変だよ」
「え?」
「よく見て!」
私はツチノコを指差す。洞窟は薄暗くて分かりにくかったが明らかにおかしな部分がある。私はそれを見過ごせなかった。
「あれはツチノコじゃない!」
「どういうこと?」
「ツチノコはあんなに身体が大きくない。それにツチノコの皮膚はもっと滑らかだよ」
「言われてみると……」
「よく見るとでっかい」
「まるでワニみたいな肌をしているよ」
「じゃあ、こいつはいったい……」
「わからない。だけど、気を付けて!」
私は警戒を強める。そして、ツチノコに似た生き物はこちらに気づいたようだ。
「ガウッ!」
大きな口を開けて襲いかかってくる。
「ライトニング!」
異変に身構えていた私はとっさに雷の球を放つ。それは命中したが、あまり効いている様子がない。
それにみんなの前で魔法を使ってしまった。記憶操作は何度も使えるものではないのに。
「ユイちゃん! 危ない!」
ミハルちゃんの声にハッとする。いつの間にかツチノコが目の前まで迫っていた。
「くっ!」
私は咄嵯に身を翻すと、攻撃を避けた。そして、杖を構えると呪文を唱える。
「考える時間が無い! ライトニング・ブレード!」
さらに強力な雷の刃でツチノコを攻撃する。
「ギャウゥッ!!」
今度は効果があったようだ。ツチノコは大きく怯むと地面に倒れた。
「今のうちにトドメを刺さないと」
「ユイちゃんダメ!」
「どうして!?」
「こいつの正体が分からない以上、下手に殺すのは危険だと思う」
「でも、このまま放置しておくわけにもいかないし……」
「とりあえず、拘束しておこうよ」
「そうね。わかったわ」
私は魔法でツチノコを縛り上げる。これで身動きは取れないはずだ。
「ふう……なんとか終わったわね」
「そうだね」
「でも、結局こいつがなんなのか分からなかったね」
「そうね。正体を突き止めないと……」
「それよりユイちゃんのさっきの力は?」
「手品よ、手品! 光る爆発を起こすような物を飛ばしたの!」
「なあんだ」
みんな目の前で縛っているツチノコに注目しているし、ここは洞窟で少し暗かったので上手く誤魔化せたようだ。
「そうだ! マサト君」
カエデちゃんがマサト君に尋ねる。
「ツチノコの匂いを辿る事ってできる?」
「ああ。一応犬を連れてきているけど……」
「なら、こいつを逃がして後を辿っていけばいいんじゃないかな?」
「なるほど。そうすれば、本物の居場所が分かるかもしれない」
「じゃあ、決まりね」
こうして、私達の目的は決まった。後は実行に移すだけだ。
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