石になっちゃえ

日本、とある住宅街


 「グルル、ガゥ!!」


 「や、食べな...うわぁぁぁぁ」


 「助け、ギャァァァ」


 まさに地獄絵図、魔犬がどんどん通行人を襲い、食べていく


 知能がないので、女子供問わずである


 数もどんどん魔界から現れ、増える


 「おらぁ、お前ら逃げやがれ!」


 集団登校していた小学生らを食べようと追いかけてきた魔犬一匹


 その魔犬の顔を蹴り、吹き飛ばすJKヤンキー


 金髪に、時代に取り残されたかのような特攻服に赤いロングスカート


 何より美人


 「ガルゥ!」


 「ちっ…」


 ヤンキーは右手の指を噛みちぎられる


 「やってくれるなぁ…ここは私の縄張りなんだよ、荒らしてくれるなよ…私、竜宮苗たつみやなえの縄張りをよぉ!」


 もはや、逃げきったものはいない、魔犬の数を前に一つの町の人間、全てえさとなった


 苗を除いて


 「うっ...血の匂いがすげぇ…」


 「ほんと、臭いわね…凪が参っちゃうじゃない」


 イダスと抱かれた凪が、スパイダーマンのように家と家を糸で移動する


 実は、イダスと凪の出会った場所と、この住宅街はとても近いのだ


 「何者…あとガキ?」


 「グルル!」


 魔犬がイダスに地面に下ろしてもらった凪を食べようと襲う


 「...」


 魔犬は腹をイダスの蹴りで貫かれ、息絶える


 「臭い...」


 「凪、怖い?」

 

 「...イダス姉がいたら怖くない」


 「(可愛すぎ…)」


 苗は、イダスと凪に構える、ただ者ではないことを見抜き


 「魔犬共、ここから去れ…この子は私の獲物よ?」


 イダスのにらみで苗を囲んでいた魔犬は、四方八方へ逃げ出し、その場にはイダス、凪、苗の3人だけが残った



  凪はイダスの隣に立つ


 「ねぇ、貴女、魔犬相手に良く耐えたわね、人間の中でも強いわね、右手の指を失って全身ぼろぼろでよく魔犬一匹とはいえ耐えたわ」


 「魔犬、魔犬ってお前ら、何者なんだ?」


 「私のとなりにいる凪以外、魔族といって人間とは違う存在よ。 貴女たちとは別の次元に住んでるの、まぁ化物と思ってちょうだい?」


 「凪とやらは、何? 貴女、人間よね?」


 凪は苗に問われる


 「人間...? だと思う」


 「(化物の私といることで、自分が分からなくなってきてる、良い♡ 良いわ♡)」


 「じゃぁ、私がこいつをぼこしてやるから、来な。 脅されてるんだろ?」


 「ぼこす? お姉ちゃんを?」


 凪から、狂気がにじみ出る


 「(な、なにこの狂気...私の狂気にも勝るほど強い)」


 苗は、凪を見て驚愕きょうがくした


 「ふふ…ふふふ...」


 凪は、不気味に笑う


 髪色は銀髪に、瞳は緑色に、そして髪の毛がだんだん蛇に変化していく


 「え、え、蛇...あ、蛇の示すもの。 不滅の愛」


 イダスも動揺している


 説明しよう


 凪は、イダスと共にいるうちに人間を見失っていた


 そんな時にイダスの狂気を浴び続け、更にイダスへの強くなる想い


 それが凪を変えた


 こんなこと、誰も想像していない


 誰も説明できない


 「イダス姉♡ 私、人間違う! イダス姉と一緒♡」


 「可愛い…可愛すぎ…やったぁ…凪が魔族に!」


 イダスは感動して泣いていた



  二人が抱き合っている間に苗はその場から逃げ出した


 「やばい、あの二人、殺られる」


 「あら? 誰が逃げて良いって言ったかしら?」


 「かしら?」


 逃げる苗の目の前にイダスと化物となった凪が先回りする


 「イダス姉、私が殺る!」


 「良いわよ」


 「ガキに負けるかよ、なめやがってぇ!」


 「石になっちゃえ…」


 その場は静まり、苗は石に変えられ、転んで割れた


 メデューサ


 凪は新たな魔族となった



  イダスは、ゲシュタルトに凪を紹介するために一度魔界に帰ることにした


 魔界、ゲシュタルトの城


 「ゲシュタルト様、蜘蛛女のイダス様がお越しです」


 ゲシュタルトの秘書がゲシュタルトに言う


 「呼べ」


 そして、イダスは凪を隣に立たせ、話し始める


 

 「ゲシュタルト様、私が地球で得た魔族、妹、凪でございます」


 「なるほど...凪、お主はなぜ魔族になったか分かるか?」


 「分かりません」


 「私も分からん、だがイダスのためなら、魔族のためになんでもしてくれそうだ」


 「はい、お姉さまのためなら、なんだってします!」


 「私の元に来い、今のおまえは心までは魔族になれていない。 私が完全にしてやろう」


 「お姉ちゃん、行ってきます」


 凪はイダスに微笑み、ゲシュタルトの元に向かう


 「(凪、魔に染まる貴女を早く見たい)」


 「よしっ、人間に未練は無いな?」


 「はいっ! お姉ちゃんさえいれば人間は要らない!」


 「気に入った…私、ゲシュタルトは、おまえを魔族に歓迎する」


 「えへへ…尽くします、ゲシュタルト様」


 次の瞬間、ゲシュタルトの手が怪しく光り、凪は眠りゲシュタルトに抱かれる


 「起きると良い、仲間よ」


 「んっ...おはようございます、ゲシュタルト様」


 凪に人間性は無い、あるのは魔の心だけ


 「お姉ちゃん、一緒にいっぱい人間を殺そう♡」


 「も、もちろんよ!」


 イダスは凪を抱きしめ、ゲシュタルトはそれを見て微笑むのだった



  地球、魔犬騒ぎからとある組織が動き出そうとしていた


 その組織の名は、自衛隊


 

 


 


 

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