蜘蛛女のときめく出会い 狂った幼き少女

魔界の地球への侵略の開始日


 地球への入り口は日本に繋がっていた


 一足先に日本の田舎に出た、蜘蛛女


 名をイダス


 綺麗な緑のショートヘア


 背中には異形の蜘蛛の足が生えている


 口を開ければ、ネバネバしたものが歯と歯に垂れる


 衣服は、地球にあわせたのか、葉っぱを着ていると思わせるようなものを着ている


 スタイルがモデル並みに良く、顔も整っていて美人である


 田舎の田んぼ道を、のんびり歩く


 そして、老人夫婦とすれ違う


 「どうも、こんにちは」


 イダスはお辞儀して挨拶する


 「偉いねぇ、あいさ...ひぃ!? 化物だ、じいさん、逃げましょう!」


 「はぁ…しゅっと…」


 イダスの背中の蜘蛛の足が夫婦のおばあさんの心臓を貫き殺める


 「ばあさん!!」


 おじいさんが慌てておばあさんの体を揺すって必死に声をかけ続ける


 イダスは人を殺めたことに眉ひとつ動かさず、立ち去った


 イダスは自身に恐怖を持った者を殺し、それ以外の者は興味もないのである


 イダスは歩く


 小学生数人の亡骸なきがらを踏みつけながらひたすら田んぼ道を歩く


 「...あ、あ、」


 「ん? 可愛い小学生がまた一人...お友達が死んでお姉さんが怖い?」


 「こ、怖い、」


 「怖い? なら、お友達に会わせてあげる」


 イダスが蜘蛛の足を少女の心臓に迫らせる


 「なんでこんなことするの?」


 純粋な少女はポロポロ泣き、震えながらもイダスに問う


 「う~ん...私のやらなきゃいけないことだから」


 「そっか、お姉ちゃん、仕方ないんだ...」


 「(さっきの私を怖がってからかってきたガキ共とは違う。 この子、そそる...)」


 「ちょっと! なぎ、何してんの?」


 小学生の亡骸とは、反対のほうから、たばこを吸いながら金髪の美人とは言えない不細工な母親らしき者が現れた


 「あれは母親?」


 「うん、お母さん」


 「早く帰って飯作れや!!」


 母親が凪と呼ばれた少女の腹を蹴る


 「貴女、自分の子に何をしてるの?」


 「あ? こいつは私の物なんだから関係ないだろうが、失せろ!」


 完全な毒親である


 「うぅ...痛いよぉ…」


 「凪、お姉ちゃんって呼んでくれて嬉しかったわ、勝手なのは分かってる。 でも、むかつくから消したい...許さなくて構わない」


 「はぁ?...おま…」


 凪の母親はイダスの蜘蛛の足に心臓を貫かれ、倒れそのまま動かなくなった


 「え、え、お母さん?」


 涙をぽろぽろ落としながら母親の体を揺する


 「ごめんなさい…凪、死なないでちょうだい(貴女のことが気になっちゃった、だからこそムカついちゃった…母親を殺めた責任はとる。 影で守ってあげる、魔族失格ね... )」


 イダスは凪から離れ、歩き始める


 その時、イダスの足に重みが加わる


 「凪...」


 凪がイダスの足に抱きついた


 「ありがどう..!」


 泣きながらも無理矢理作った笑顔でイダスにお礼を言った


 「凪、凪!」


 イダスは凪を抱き締めた、力加減はきちんとして


 「お姉ちゃん、凪、お姉ちゃんと一緒が良い!」


 「でも、凪には刺激が強いわ、人が死んじゃうのよ? 目の前で」


 「...怖いけど、もっと怖いママをやっつけてくれた! お姉ちゃんが正しい!」


 「うっ...そりゃっ」


 イダスは凪を肩車する


 「連れてってあげるわ、お姉ちゃんの旅に」


 「えへへ、お姉ちゃん、好き!」


 「(立派な魔族に、蜘蛛女に育ててあげるわ...)」

 

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