第2話 「手短に言えば我々は、このガーディナル星系にアースマンが存在することを認めない」 シュヴァルツシルトⅢ(PC98・光画堂・SLG)

大銀河シュヴァルツシルトを舞台とした、工画堂が誇るシナリオSLG「シュヴァルツシルト」シリーズ。

それはかつて私が心から惚れ込んだシリーズであり、この「Ⅲ」は其の中でもシナリオ・システム共に傑出している、最高傑作だったと思います。


諸国の野心・謀略が交差し、民族間の軋轢も水面下に内包するも、二大超大国を中心として微妙なバランスを保ちそれなりの平穏を維持していたガーディナル星域。

しかし「かつて星域を支配していたアースマンの再入植問題」を契機にその秩序は徐々に綻んでいき… やがて巻き起こるは星域全土を巻き込んだ大混乱。

そしてそんな荒波の中でもがき苦しみつつ、自国を、同胞を守る為に意に沿わぬ戦いを続けざるを得なくなる主人公。

「銀河の諸族が手を取り合い、新しい秩序の元に繁栄する日を、私は信じて疑わない」冒頭でそんな事を呟いていた理想家肌の民主主義者が、「我、エグザシオ=グラフツゥラーは、力をもって銀河を統べん!」と謳う結末に至るまでの物語。何度プレイし、何度味わったか判らぬくらい堪能させて頂いたものです。 


シリーズの底流にある「光の戦士伝説」においても「Ⅳ」と並ぶ最重要な作でありながら、単品としても見応え充分な本作。

突如植民星系で蜂起する「ILO(イノン解放機構)」(どう見てもモデルがPLOとアラファト議長)との対決から始まり、やがてはその背後で蠢き「民族問題」を盾に勢力拡大を狙う隣国の野心家との衝突へ。更にはその背後にも、表では「絶対平和主義」を掲げつつ裏では異種族排斥を目論む法王があり… と次第に拡大していく戦火。

その上他にも「理念」「信義」など毛程にも重視しない機会主義・利己主義の権化と言うべき野心家あり、「宇宙統一国」と名乗る様に、ある意味清々しい程真っ直ぐに拡張路線を推し進めている軍事国家あり、機会を逃さず瞬く間に超大国の主導権を握り、烈々たる野心のまま行く手に立ちはだかる一世の雄あり。

そして最後には自分の解釈した「光の戦士伝説」を妄信し、屍山血河を築きつつ移動要塞で襲い掛かってくる光の戦士あり、と。

様々な人物がその野望を、理想を掲げ、物語を彩ってくれておりました。

未だに私の心の殿堂入り作品といえば、真っ先に思い浮かぶ、そんな作品です。


なお追記しておきますと、後に「シュヴァルツシルトⅢ Truth」というリメイク版が出ており、基本的には忠実な移植がされてはいるのですが…

妙な蛇足的モノローグが随所に追加されている上、何故か読んでいて面白かった各国の戦艦解説は削除されているという点で、個人的には今一つでした。


総合評価 … ★★★★★(シナリオは希代の逸品)

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