第3話  アッシュ(PC98・姫屋ソフト・ADV)


世にマルチエンドのゲームは数ありますが、私がかつてプレイした中で、主人公の行く末の多彩さという面で実に印象深かったもの、それがこの「アッシュ」です。


本作の内容としては、プレイヤーが一旗挙げようと都会に出てきた名も無い主人公となり、分かれ道の左右どちらに進むかという様な単純な二択から、目の前で起きた事件にどう対処するかといった重要な選択まで、多様な状況の中で数多の選択を重ねその結果として様々な結末を迎えるという、端的に言えばそんなADVであり、タイプ的にはゲームブックを彷彿とさせる様な作品でした。


一つ一つの物語はそれ程長くないものも多く、時に余りに唐突に終わりを迎え、ポカンとする事さえありましたが… 全体を通しての程よいテンポや、さりげなく塗された毒気など、全体としては結構気に入った世界観だった様な覚えがあります。

何気ない選択の中での理不尽な一発死や、どの選択肢を選んでもどうにもならない場面(渡っている途中のつり橋が崩壊し始めた時など)があった事なども含め、それもまたこのゲームの味わい、といった感じで…


そして冒頭にも挙げた様に、やはり本作の特筆すべき点と言えば、およそ40にも及ぶ、なんとも多彩な結末でありましょう。

印象深いものを幾つか挙げるだけでも「国王(但し亡命政権で国民数十名)」「邪教の司祭」「世界を裏から牛耳る麻薬王」「ゴブリンの族長」「龍騎士」といった凄いものから、「過去を懐かしむアル中」「生贄」「逃亡兵」「莫大な借金を背負わされた酒場の親父」といった悲惨なものまで、まさに多種多様。

これらの中には、このゲームでしかお目にかかった事の無い様なEDも数ありました。

…なお、物語の途中での墜死・斬死・餓死といった、これまた多彩な「野垂れ死に」はこれらの員数には入っておりませんので、厳密にこれらを加えれば、EDの数は更に増える事も付記しておきます。


「あらたな道」を探すべく、違う選択肢を求め彷徨うといったやりこみも良し、たまに思い出してお手軽に遊ぶのも良し、何も知らぬ友人にやらせて後からそれを眺めるのも一興…

思えば色々と遊べた作品でありました。



総合評価 … ★★★☆(お手軽だが、なかなか作り込まれた一品)

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