海と彼女

暑い日差しが照りつける中、海水浴場で奏さんが水着に着替え終えるのを待っていた。

しかし、奏さん付き合えたという実感が湧かない。

しかも今日は奏さんは水着姿なのだ。

自分の心臓は持つだろうか、とそわそわしながら待っていた。


すると、「お待たせ!」と、声が聞こえたと思うと、突然背中から抱き付かれた。

背中に柔らかい物が当たっているのを感じ、僕は慌てた。

何とか首だけ後ろを向くと、奏さんと目があった。

奏さんはニヤッと笑うと、「驚いた?」と、聞いてきた。

僕は頷くと、ようやく奏さんは僕を解放した。

振り返って、奏さんを見た僕は思わず固まってしまった。

奏さんは水色の水着を着ていて、髪型はポニーテールだった。

その清楚な感じに見惚れつつ、何とか、「綺麗です」と、告げると、奏さんは、「やった!」と、小さくガッツポーズをした。


「透君に気に入ってもらえるように頑張ったから、そう言ってもらえて良かった!」


そう言うと、僕と奏さんは手を繋ぎ、レジャーシートを敷く場所を探す為に歩き出した。


レジャーシートを敷くと奏さんが口を開いた。


「さぁ、透君、泳ぎに行くよ!」


そう言って走り出そうとする奏さんを慌てて僕は止めた。


「奏さん、まずは準備体操をしないと」


「あっ、そうだね、怪我をすると大変だもんね」


僕と奏さんは準備体操を終え、海に入った。


「冷たくて気持ち良いね〜」


「本当ですね〜」


僕と奏さんはプカプカと浮かびながら、ゆっくりしていた。


しばらく、ゆっくりしていると、奏さんがハッと何かに気付くと慌て出した。


「透君、こんな事をしている場合じゃないよ! もっとカップルっぽい事をしないと!」


「……奏さん、すごい気合いが入っていますね」


僕のその言葉に奏さんは大きく頷いた。


「それはそうだよ。だって、初デートだよ! イチャイチャしたいじゃん!」


「そ、そうですね。僕もそう思ってます」


僕が言うと、奏さんは、「嬉しい!」と、言って僕に抱き付いた。

奏さんの胸が僕の胸に触れ、僕はたじろいだ。


しばらく抱き合うと、僕は口を開いた。


「……カップルっぽいですかね」


「……カップルっぽいよ」


そうして、僕らは長い時間、そうしていた。



奏さんが、「お腹が空いた」と、言うので海の家で焼きそばを購入した。


「奏さんって、焼きそばが好きなんですか?」


レジャーシートに座りながら僕が言った。


「お祭りとか海とかで食べる焼きそばが好きかな」


「ああ、それは分かります」


僕が頷いていると、奏さんが、「あーん」と、言って焼きそば差し出してきた。


少し緊張しながらも食べて、「美味しいです」と、伝えると、奏さんは笑いながら、「あーん」と、口を開いた。


昼食はそうやって食べさせ合いながら過ぎていった。


昼食後も海で遊び、気が付けば夕方になっていた。


「夕陽が綺麗だね!」


「本当ですね」


僕と奏さんは夕陽を眺めていた。


ぴったりと寄り添って、奏さんの体温を直に感じた。


「……透君」


奏さんはそう言うと、顔を近づけて来た。

僕は自然と何をすべきなのか理解をして目を閉じた。

唇に柔らかい感触が訪れた。


「……キス、しちゃったね」


「……はい」


「透君」


「なんですか、奏さん?」


「……また、来ようね」


「……はい、必ず」


そう言うと、僕と奏さんは再びキスをした。

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