花火と告白

奏さんと花火大会に行く日。

僕はタイミングにもよると思うが、今日の花火大会で奏さんに気持ちを伝えたいと思っていた。

そう考えると緊張してしまい、そわそわして奏さんが僕の部屋に来るのを待っていた。


インターフォンが鳴った。

僕は逸る気持ちを抑え、玄関に向かった。


扉を開け、奏さんの姿を見て僕は息を呑んだ。

奏さんは紺色のワンピースに麦わら帽子を被り、大人っぽく、そして可愛らしくもあり、見惚れてしまう。


そう思っていると、奏さんが僕の格好を見て口を開いた。


「透君、普段より大人っぽくて、格好良いよ」


「ありがとうございます。奏さんもその、綺麗です」


「……うん、ありがとう、嬉しい」


そう言って奏さんは微笑んだ。



僕と奏さんは電車に乗って、花火大会の最寄駅まで向かった。

そこから、歩いて河川敷に向かった。


「花火大会までまだ時間があるけど、結構人がいるね」


「でも、まだ空いているスペースもありますよ」


僕と奏さんは空いているスペースにレジャーシートを敷いた。


「これで、場所は確保出来ましたね」


「そうしたら、屋台を見に行こうか」


僕は頷くと奏さんと共に屋台が集まっている場所へ足を向けた。


「何を食べたいですか?」


僕が聞くと、奏さんは顎に手を当てて考え始めた。


「焼きそばとたこ焼きで悩むなぁ。かき氷はマストだね」


「そうしたら、焼きそばとたこ焼きを僕と半分こにしますか?」


僕が聞くと奏さんは笑顔を見せた。


「いいの? ありがとう!」


僕と奏さんは焼きそばとたこ焼き、そしてかき氷を購入すると、レジャーシートを敷いた場所まで戻って来た。


僕はたこ焼きのパックを開き、奏さんは焼きそばのパックを開いた。


僕がまずたこ焼きを食べよう、と思っていると、奏さんが、「あーん」と、言って焼きそばを差し出した。


僕が戸惑っていると、奏さんは、「早く、早く! 落ちちゃう!」と、急かしてきたので、慌てて口を開いて焼きそばを食べた。


奏さんは、「美味しい?」と、聞いてきたので取り敢えず、「美味しいです」と、答えたが、正直味はよく分からなかった。


奏さんは満足そうに頷くと、「あーん」と、言って今度は奏さん自身が口を開けた。


たこ焼きを食べさせて欲しいのだろう、と思い、恥ずかしい気持ちを抑え、「あーん」と、言うと、奏さんにたこ焼きを食べさせた。


そんな風に食事を進めていると、花火大会の開始のアナウンスが聞こえてきた。


奏さんが、「いよいよだね」と、言うのと同時に最初の花火が打ち上がった。


隣に座る奏さんの横顔が花火の光に照らさせて、笑顔が浮かび出てきた。

その表情は見惚れてしまう程に素敵で、気持ちが高まっていき抑えられなくなっていく。


僕が聞こえる様に近付いて、「奏さん」と、声を掛けると、「なーに?」と、奏さんが言葉を返す。


「こんな時に言うのもあれですけど、その、好きです」


奏さんはキョトンとした表情をした後、笑顔になると僕の耳元に顔を近付けた。


「嬉しい、私も好き」


恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが混ざって思考が停止しかけたが、まだ伝えなければならない事がある。


「その、僕と付き合って下さい」


奏さんは自分の手を僕の手に絡めると、「よろしくお願いします。透君、ずっと一緒だよ?」と、微笑んで言った。


その瞬間、花火が連続で打ち上がった。

それはまるで僕達を祝福してくれている。

僕はそう感じたのだった。

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