テストを頑張ったら

「そう言えば、透君はそろそろ期末テスト?」


「そうですね、そろそろです」


六月も半ばに差し掛かろうという今日、「じめじめする〜」と言いながら、今日も奏さんが僕の家に来ていた。


「それなら、私も課題が結構出たし、前の中間テストと同じ様に来るの控えようかな」


その奏さんの言葉に中間テストの時と同じ様に終わればまた会えると分かっていても、奏さんへの恋心を自覚した僕は寂しさを感じてしまう。


その寂しさが顔に出てしまったのか、奏さんが僕の顔をジッと見ると口を開いた。


「そう言えば、七月の中旬にここら辺で大きな花火大会があるんだって、透君、知ってる?」


急に話が変わった事に戸惑いながらも僕は頷いた。


「河川敷で毎年やっている花火大会ですよね。知ってますよ」


僕の言葉に奏さんは満足そうに頷いた。


「そうそう、それそれ。友達に聞いたんだけど、すごく綺麗なんだって。だから、透君の期末テストが終わったら二人でその花火大会に行こうか」


僕の寂しいという気持ちがやはり表情に出ていたのだろうか。

それで奏さんが気を遣って今の提案をしてくれたのだとしたら恥ずかしいという気持ちもあるが、それ以上に嬉しいという気持ちが僕の心を占めていた。


「近くでやっているからか、あまり行った事が無いんですよね。なので是非行きたいです」


僕の返答に奏さんは嬉しそうな表情を浮かべる。

その表情につい見惚れていると奏さんが再び口を開いた。


「そうしたら、その日がお披露目だね」


その日に何を披露するというのだろうか。

奏さんの言葉に首を傾げていると、僕が分かっていないと察したのか、奏さんが言葉を続けた。


「この前それぞれ買った紺色の服だよ。それを着て花火大会に行こう!」


奏さんの今の説明でようやく、お披露目の意味を理解した僕は、「成程、着ましょう」と言って頷いた。


「奏さん、そう言えば、服の事で聞きたい事があって、聞いても良いですか?」


僕がそう言うと、奏さんが視線で続きを促してきたので、言葉を続けた。


「奏さんはワンピースだから大丈夫ですけど、僕の服はシャツなので、ズボンはどういうものを履けば良いですかね?」


その僕の言葉に奏さんは顎に手を当て考え始めた。


「うーん、やっぱり無難にベージュのズボンが良いかな。透君、持ってる?」


奏さんの言葉に僕は頷く。


「はい、持っています。そうしたら当日はその服を着て来ますね」


「うん、楽しみにしているよ。そうしたら、まずは期末テストを乗り切ろうね!」


奏さんはそう言うと笑顔で応援をしてくれるのだった。




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