ペアルック

次の週の土曜日、僕と奏さんは近くのショッピングモールに訪れていた。


「透君、この服はどう?」


そう言って試着室から出て来た奏さんが来ていた服は水色のワンピースで清楚な感じが奏さんにとても似合っていた。


「とても似合っていると思います」


「ありがとう! 後、もう一着あるんだ」


奏さんは笑顔で言うと、再び試着室に入った。


次はどの様な服を着て来るのか楽しみに待っていると奏さんが試着室から出て来た。


奏さんが着ていたのは紺色のワンピースでとても大人っぽく感じる。

先程の服装とのギャップもあって、僕は何も言えずに固まってしまった。


そんな僕を見て、奏さんはニヤリと笑うと、「どう?」と感想を急かしてきた。


僕はただ一言、「……綺麗です」と返す事が精一杯だった。


奏さんは僕の言葉に満足そうに頷くと、「うん、この服にするね」と言い、試着室に入って行った。


僕はこの短いやり取りでどっと疲れたのだった。


会計を済ませると今度は僕の服を探す事になった。


「これを試着室で着てみて?」


奏さんと入った服屋で奏さんが僕の為に選んでくれた服は全て紺色だった。


「奏さん、これは……」


僕が戸惑いながら言うと奏さんがにこりと笑った。


「うん、ペアルック! 折角だし、同じ色の服にしようかなって思って」


その素直な言葉に僕は嬉しさと恥ずかしさ、両方を感じ、「良いですね」と短く答えると試着室に慌てて入った。


その後、何着か着て奏さんに見せていると最後の一枚になった。

最後の服は襟付きのシャツで、ボタンを閉めると試着室から出て、奏さんに披露した。


「おっ、良いね! 大人っぽい!」


大学生の奏さんに大人っぽいと言われるとなんだか隣に並べた様で嬉しい気持ちになる。


「ありがとうございます。 これ、気に入ったので購入をしてきます」


会計を済ませ、店を出ると時刻はお昼だった。


奏さんの、「お昼ご飯を食べようか?」という提案に僕が頷くと二人でフードコートに向かった。


それぞれ購入したものを食べていると奏さんが口を開いた。


「折角お揃いの色の服を買ったからまたデートしたいね?」


「はい、行きたいですね」


僕が即答すると奏さんはキョトンとした顔をしている。

デートの提案をしてくれた事が嬉しくて、即答してしまったが、がっつき過ぎだと思われただろうか。


「そんな真っ直ぐ返されると思わなかったから、驚いちゃった。 ……嬉しい」


そう言って、笑顔を見せた奏さんに僕は完全に視線を奪われて、「あ、ありがとうございます」と返す事が精一杯だった。

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