買い物の約束

五月下旬、今日は久しぶりに奏さんが僕の部屋を訪れていた。

奏さんの大学の課題が忙しくなり、僕も中間テストがあった為だ。


「すごいね、全部高得点だ! 透君って頭が良かったんだ」


「まぁ、部活もバイトもしていないので、勉強くらいは頑張らないといけないので」


テーブルで僕の中間テストの結果を見ている奏さんに僕は台所で料理をしながら答えた。


「一人で家事をしながら、勉強もしっかりやって、透君は偉いね」


奏さんはこちらを見て、笑顔を見せた。

奏さんに恋をしている事を自覚したからか、ちょっとした事でも褒められるとすごく嬉しい気持ちになる。

嬉しい気持ちが表情に出過ぎない様に気を付けながら口を開いた。


「もう高二になったんで、そろそろ受験の事も考えなければいけませんから」


「確かにそうだね。透君は通いたい大学はあるの?」


「まだ決まっていないですね。やりたい事もまだなくて」


僕がそう言うと奏さんは小さく手を叩いた。


「それなら、まだ時期は先だと思うけど、私の大学のオープンキャンパスに来ない?」


色々な大学を見る事で何か刺激を受けるかもしれないし、奏さんが通う大学を見てみたい気持ちがある。


「是非、行きたいです」


「日程が分かったら連絡するね? 当日は案内するよ」


奏さんはそう言って微笑んだ。


食事を終えると僕と奏さんは二人でソファーに座ってテレビを見ていた。

ニュース番組がやっていて梅雨の話題を取り上げていた。


「梅雨かー、ジメジメして暑いね」


奏さんは嫌そうな顔で呟いた。


「そうですね。制服もそろそろ衣替えですし、これからどんどん暑くなりますよ」


「そうだよね」と、呟くと奏さんは顎に手を当てて何かを考え始めた。


「……そう言えば、荷物持ってくるの大変だから、こっちで買えば良いと思ってあまり夏服を持って来なかったな」


「それだとこれから暑くなった時に大変ですよね」


僕の言葉に奏さんは力無く頷く。


「うん、暑いの嫌だから、早く買いに行かないと」


すると、奏さんは何か思い付いた様に顔を突然上げた。


「そうだ、透君は今年は夏服買う?」


「あまり服に拘らないですけど、少しよれてきた服もあるので買おうと思ってました」


「それなら一緒に服を見に行こう! 私、透君の洋服を選んでみたい!」


「……奏さんが選んでくれるんですか?」


僕は驚いて思わず聞き返していた。

奏さんはそんな僕に頷いて答えた。


「うん、透君は何色が似合うかな。落ち着いているし、男子だから紺とか黒かな。うーん、悩むなぁ」


奏さんは僕の顔をジッと見ながら、あーでもない、こーでもないと楽しそうに僕の服について考え始めた。

奏さんのその様子を見て買い物に行く事がより楽しみになるのだった。

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