デートが楽しいからだよ?

チケットを購入し、二人で入場した。

僕は入り口で貰った地図を確認する。


「ここは東園で、パンダがいる所は西園みたいなので、東園を見ながら、西園に向かいましょうか?」


僕の提案に奏さんは頷くと二人で歩き出した。

初めに見たのはリスだ。


「わぁ、可愛い〜 あっ、あの追い掛けられているリス、透君みたい!」


奏さんは追い掛けられているリスを指差してイタズラっぽく言う。

それに対して僕は追い掛けているリスを指差した。


「それだったら、あの追い掛けているリスが奏さんですね」


僕がそう言うと奏さんの厳しい視線が飛んでくる。


「……追いかけ回しているって言いたいの?」


それに対して僕はゆっくり首を横に振る。


「いつも様子を見に来てくれるって言いたかっただけですよ」


僕の返答に、「本当かなー」と呟く。


そんな事を話しながら、今度は象を見る為に足を進めた。


「あの象、透君に似ているね」


「さっきは確かリスだった筈ですが、随分と大きくなりましたね」


「男の子の成長は早いって言うからね」


そう言うと奏さんは楽しそうに笑った。


「……奏さん、いつもよりテンションが高くて、楽しそうですね」


僕の言葉を聞くと奏さんは僕と視線を交わらせた。


「透君とのデートが楽しくて、嬉しいからかな」


普段と違う奏さんを見せてくれている事が嬉しくて、僕は、「良かったです」と、言って奏さんと一緒に笑った。


次に僕達は鷲と鷹を見に来ていた。


「格好いいね〜」


興味津々で見ている奏さんについイタズラ心が芽生えた。


「ここには僕に似ている動物はいませんか?」


「そうだね。もっと大人っぽく格好良くなったら、あの子に似てるかもしれなないね。でも、まだ早いかな」


平然と返り討ちにあい、何も言えなくなってしまう。

そんな僕を見て奏さんは微笑むと口を開いた。


「まだまだこれからだよ、少年! 期待しているよ!」


その後は、奏さんが明るく、「私をからかうのはまだ早かったね」と言うのを聞きながら、ライオンの檻の前まで来た時だった。

突然ライオンが吠えたのだ。


「きゃあ!」と声が聞こえたかと思うと僕の腕に軟らかな感触が訪れた。

驚き、横を見ると奏さんが僕の腕に抱きついていた。

良い匂いがするやら、軟らかいやら、感情がごちゃ混ぜになって固まってしまう。


「格好つけた直後にこれじゃあ、馬鹿みたいじゃん!」


その顔が赤くなり、恥ずかしがっている奏さんを見ると先程のイタズラ心がまた僕の中で芽生えてきた。


「奏さん、可愛い声でしたよ?」


「あっ、やり返してきたなー! うー、透君の馬鹿!」


怒る奏さんを見て可愛いなと思った。

僕は思わずに笑顔になってしまわないよう気を付けながら奏さんを宥めるのだった。

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