私はデートだと思っているよ?

奏さんと約束をした日、僕は自分の部屋で奏さんを待っていた。

服装は昨晩、散々悩んだ結果、やはりシンプルが一番という結論に落ち着き、白シャツに黒いスキニーという服装にした。


インターフォンが鳴る。

僕が扉を開けると奏さんが顔を覗かせた。


「おはよう! 透君」


奏さんの挨拶に僕も「おはようございます」と返しながら外に出た。


奏さんの姿を見て僕は驚いた。

ポニーテールに白のワンピース姿の奏さんがそこに立っていた。

とても清楚な服装で大人っぽい顔立ちの奏さんが着ているとまるでどこかのお嬢様のようだ。

さらに髪型はポニーテールという格好に僕は固まってしまう。

奏さんはそんな僕を見て答えは分かっているはずなのに意地悪な顔で「どう?」と聞いてくる。


「……すごく似合っています」


その答えに奏さんは満足そうに頷く。


「透君の好みの服装をずっと考えていたからね。やっぱり清楚な服装が好きなんだね。その反応を見れて良かったよ。やっぱり私の目に狂いはなかったよ」


僕の為に服装を一生懸命考えてくれていた事を嬉しく思いつつも、僕の好みはそんなに分かりやすいのかと少し落ち込む。

奏さんは次に僕の服装に視線を移した。


「透君、細いから綺麗めな服装がすごく似合ってるね。それに……」


そう言いながら奏さんは白のワンピースを指差す。


「透君のシャツと私のワンピース、色が一緒だね。お揃いだ!」


奏さんの無邪気な笑顔につられて僕も笑顔になる。


「奏さん、楽しそうですね」


「だって、デートだからね!」


「デ、デートですか?」


なんとなく口にする事が恥ずかしくて言い淀んでしまう。

そんな僕を奏さんはキョトンとした顔で見ている。


「えっ、男女二人で出掛けるならデートじゃないの?」


奏さんのその返答に自分が意識をし過ぎている事を感じる。

僕はデートと聞くと付き合っている人同士が出掛けるイメージがつい思い浮かんでしまう。


「まぁ、その通りですね」


そんななんとか誤魔化した僕の様子を見て、奏さんは「ああ」と言って微笑む。


「透君、私は仲の良い男女が出掛ける事もデートだと思っているよ。今日もすごく楽しみにしてたんだ」


奏さんが僕の事を仲の良い男子と認識してくれている事に心が満たされるのを感じる。


「そうですね。僕もすごく楽しみにしていました。気を取り直して行きましょう、デートに!」


僕が笑って言うとその様子を見て奏さんが嬉しそうに「うん!」と言って頷いた。

そして「出発だ〜」と言いながら先を行く奏さんを見て今日一日が楽しくなる予感を僕は感じた。

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