第18話 裏で協力することになった主人とある従者




「ハル様」

「! あなたは……!」


 ユキがハルから消えて、ハルはもどかしい日々が続いた。そんなとき現れたのがカイの従者のサクだった。


「お話があるのですが、今お時間よろしいでしょうか」

「構いません」

「では、場所を移動しましょう」


 サクとハルが二人きりになると、サクは話を切り出した。


「ストレートに申し上げますと、ユキ様をカイ様から取り戻すのには二つ、案がございます」

「! ……カイ先輩の従者が敵のぼくに教えていいんですか?」

「敵、ですか」

「それ以外ないでしょう?」

「たしかに、ハル様にとってカイ様は敵のようなものでしょう。しかし、わたくしのことは敵視しないでいただきたいですね」

「……ぼくを味方にして、あなたに何の利があるんですか?」

「色々あります。一つあげるとするならば、わたくしの目的に必要不可欠となりますから」

「……あなたの目的?」


 ハルは訝しげな反応をする。


「はい。わたくしは、できることならばハル様にユキ様を救っていただきたく存じます」

「それはなんで?」

「わたくしがカイ様に恋慕を抱いているとしたら、信じてくださいますか?」

「っ……!」


 まさか、とハルは思った。


(同性愛者か)


 数は少ないが、同性を好きになる人はゼロではない。それがたまたま、ハルの近くにいただけだ。


「そのこと、カイ先輩は?」

「存じません」

「……ぼくがユキちゃんを取り戻しても、あなたがカイ先輩と結ばれる可能性は低いんですよ?」

「それでも、毎晩抱いていないと思えれば十分です」

「!? まっ、だっ……!?」

「はい。毎晩、抱いております」


 なんとなく、もしかしたらとは思っていた。だが、毎晩だとは思ってもいなかったハルには衝撃が大きかった。


「……ユキちゃんを助ける方法を教えてください」

「かしこまりました。方法は先ほども言ったように二つ。一つはカイ様の部屋または特進クラスに侵入し、ユキ様を連れてここから逃げることです」


 それはハルも考えていた。

 だが、あまりにもリスクが大きいし、成功したところでユキがハルの手を取ってカイから逃げられるかが運命を分ける。

 仮にユキが逃げたいと思っていたとしても、カイの束縛から逃げられるかはわからない。正直、難しい。


「もう一つは、ハル様もことです」

「!」


 特進クラスに上がるためには、テストで一位を取らなければならない。この学校は、一般クラスのトップと特進クラスの最下位がテスト終了後に変わるシステムがある。

 だから長く特進クラスに在籍する生徒はエリートと呼ばれるのだ。


「特進クラスになれば、寮が一緒になりますので連れ出しやすいですし、特進クラスのフロアに行くこともできるようになります」

「……」


 特進クラス。

 そこにいけば、ユキに近づける。


―――私、カイのそばにいるって決めた

―――ごめん


 どうしてそんなことを言ったの、と、ハルはずっと聞きたいと願っている。


「……わかりました。特進クラスに、上がります」

「決して簡単なことではありません。しかしユキ様のためなら、きっと叶えられることでしょう。頑張ってください」

「はい」

(待っててね、ユキちゃん)


 ハルは決意を胸に特進クラスを目指す。



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