「バックします」はガッツ石松に聞こえる

 色々やらかしつつも、バイク・車ライフを送っていた私。

 結婚してからは夫の地元に引っ越し、運転が得意な夫に任せていたのですが、時々自分で車に乗ることもありました。

 古い歴史のある町なので、碁盤の目に区切られた道路は分かりやすいとはいえ狭くて恐ろしい。私も長女同様、強制レーンの罠にはまってよく叫んでおりました。

 ある時、練習がてら夫を横に乗せて走っていたのですが、上級者の夫はハラハラしていたのか、やたらと口出ししてきます。あまりに口うるさいので、短気な私は運転しながらぶち切れ、路肩に車を停めてそのまま歩いて帰りました。(ちょっと道に迷った)


 当時住んでいたマンションは駐車場が狭く、腸の弱い夫にはよく「急にお腹痛くなったからトイレ行く。駐車だけ頼むわ」と、急にハンドルを任されていました。

 この私にこんな狭小スペースに停めろというのか。ぶつけないように細心の注意を払ってナメクジのごときスピードでミリ単位で進みます。結局駐車に10分以上かかって、トイレを済ませた夫がまた戻ってくるなんてこともありました。


 そんなこともありつつ、子供が生まれてからも、夫が電車通勤する日は送迎もしていました。

「お迎え一緒に行こうね~」と、チャイルドシートに息子や娘を乗せると、彼らはベルトをしっかり握りしめ「まだ死にたくない!」と叫びます。夫の運転の時はそうでもないのに、私が運転してる時はなぜか口数少なめです。

「そんな可愛い? こともあったのよ」と、思い出を語った際、息子はまったく覚えておらず、「恐ろしすぎて記憶から抹消したんや」と言っていました。


 失礼な。(;゚Д゚)


 ちょっとでもその場の空気を和らげようと、駐車する時はトラックでよく流している「バックします」という声を真似て「ガッツ石松。ガッツ石松」などと遊び心を加えていたのですが、恐怖に震える子供達には効かなかったようです。

 ミリ単位で進むので、途中で飽きてしまうこともあって、先に子供達だけ家に帰らせて、一人しくしく泣きながら駐車していました。(泣いたのは嘘)


 同乗者に同情するくらいの腕前ですが、人が一緒に乗ってる時は慎重に運転することを心がけていました。

 そう、弟の尊い犠牲を無駄にしないためにも……。滝のように流れる涙。(彼は健在です)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る